
大人になって気づいた、YOUさんのカッコよさ
峯岸 私の「人生の道しるべ」は誰だろう? と考えた時に真っ先に思い浮かんだのがYOUさんだったんです。
YOU あら、光栄です。
峯岸 タレントとして「この場所に残れるように頑張らないと」ってがむしゃらにやるのが楽しくもあり、不安もあって。でもYOUさんはずっとテレビに出ているのに、そこに執着はなさそうで、いつも軽やかでいらっしゃいます。この身の振り方はどうやったらできるようになるのか。知ったところで私に真似できるものかわからないですが、お聞きしたいと思って声をかけさせていただきました。
YOUさんのことはもちろん小さい頃から認識していましたが、そのすごさに気づいたのは実は25歳を過ぎてからで。自分が大人になるにつれてどんどん憧れが増してきています。
YOU ありがとうございます。みなみちゃんはいくつからこの世界に入ったんだっけ?
峯岸 AKB48に入ったのは2005年で、13歳でした。

YOU 17年前か……。我々がテレビに出始めた頃はバブルだったから、みんなお金があって、自由があって。たまたまそんな時代にデビューできたもんだから、ただのラッキーですよ。今みたいに不景気だとのびやかにはしてられないじゃん。
あたしはそもそも目標みたいなものが今も昔もないんだけど、この時代は何かに向かっていないとやっていけないと思う。
峯岸 でも、YOUさんも昔はダウンタウンさんたちに揉まれて、血みどろになりながらコントをされてたと聞いて。
YOU ああ、そこは揉まれたね!(笑)
峯岸 目標もないなか、大変なお仕事をするモチベーションはどこにあったんですか?
YOU そうだなぁ。目標はないけど、一つひとつのお仕事は頑張るんです。当時はバンドのボーカルだったけど、『ダウンタウンのごっつええ感じ』を本気でやりたいと思ったし、ダウンタウンさんの思いに応えたかったから事務所は反対していたけど「絶対やる!」って言った。自分がやりたいことをやりたいって欲求だけは強いのかもしれないですね。
いただいたお仕事を点々と頑張っていたら、見ている人や周りの人が勝手に次の仕事を繋げてくれた感覚。何歳までにこれをするみたいな考えはまるでなかったんですよ。今日もみなみちゃんと話したかったから来たってだけで。
峯岸 うれしいです。何かを目指すわけではないんですね。ただ目の前にやりたい仕事が来たから一所懸命にやっていた。
YOU そう。好きなこととか、好きな人がいると頑張るの。だから興味ないことはやらないし、興味ない人には「すいません、人見知りで!」って逃げちゃう、すごく失礼ですよ。ダメよこんな生き方(笑)。

もう、「中途半端」を極めることにした
峯岸 それでも、私にはYOUさんの選ぶものは全部「正解」に思えるんです。そのセンスが憧れなんですけど、私はアイドル時代から、曲も振り付けも衣装も与えてもらってばかりで、自己発信をする機会がないまま30歳になってしまって。
だから自分にまったく自信がなくて、どうやったらその「好き」がわかるようになるんですか?
YOU そっかぁ、若いコならではの悩みだね。ずっと好きなことをやっていると自然に身につくけど、そもそもその経験がまだないならしょうがない。ここから何が自分にとって心地いいのか、知っていくんじゃない? 好きなカルチャー、好きな洋服と音楽。好きな場所。
峯岸 自分の欲に忠実に行動したら、わかるようになるんですかね……?
YOU 旦那さんとでもいいから、今までやってないことをいっぱいやりなよ。旅に出るとか、フェスに行くとか。
峯岸 フェスには行ったことないです!
YOU やったことないことたくさんあるでしょう? 経験してみて「またやりたい」と「もうやらない!」を決めていくの。その結果あたしの20代はクラブに入り浸りだったんだけど(笑)。年齢を重ねて、心地いい居場所や好きなものが変わっていきながら、もう50歳になった時は好きなものばっかり囲まれているよ。
でもみなみちゃんもただ与えられたことをやる可愛いコちゃんというよりは、バラエティとか見ているとなんか意志を感じるんだよね。
峯岸 ホントですか? 坊主にしたからですかね……。
YOU あれも面白かった(笑)。と言うと悪いけど、すごい決断するじゃんって。自虐っぽいことで笑いもとれるし、自惚れを全然感じないし、色んな人にかわいがられそうだけどね。実際の性格はどう?

峯岸 臆病だと思います。好かれたい人によく見られたいと思って委縮しちゃいます。今日もYOUさんにどういうアプローチで話したら気に入ってもらえるかをすごく考えていました。ちょっと前に番組で共演させていただいた時も私は自虐強めに出ていってしまって、YOUさんは横にいる渋谷凪咲ちゃんとキャッキャしていたから、あんな感じに無邪気に接するほうが好きになってもらえるんだろうな、あんな風になれたらな、と思っていました。
YOU あはは。凪咲はニコニコしながら隙間を探せるデキる関西の人って感じだから。でもあのタイプも一人いれば十分、みなみちゃんも自分らしい振る舞いをしてればいいのよ。
峯岸 どうしても人と比べちゃうんですよね。番組の収録中にしゃべった数が私より多いとか、飲み会でもあの人は私よりも色んな人に話しかけられているなとか。劣等感で溺れそうになる時があるんですけど、YOUさんはそんなこと今までありましたか?
YOU まったく、とは言わないけどあたしはあんまり比べない。すぐ諦めちゃう。子どもの頃にバレエを習っていたんだけど、最初は「プリマドンナになる!」って言っていたのにすぐやっぱ無理!って辞めた。走っても3位、スタイルも顔もそこそこ。そうしているうちに人と比べなくなったし、自分に何の期待もしなくなった。もう、中途半端を極めることにしたのよ。
峯岸 はー。
YOU だってそのほうがラクだよね。今の芸能界の仕事が全部なくなっても好きな人と好きなものと好きな場所さえあれば、あとはバイトでもすればいっか、みたいな。
峯岸 好きなものが明確にわかっているから、怖くないということですね。

自信はなくとも、「役割」はあるはず。
YOU 若い頃に比べて仕事がなくなっていくのも普通のことだと思ってるから、そのための準備や計画はしてるかな。家を買ったり、後輩を育てたり。ずっと同年代ばっかりで遊んでいると、そのうちみんな死んじゃうじゃん(笑)。仕事の計画はホントにしないんですけどね。みなみちゃんは何をしているのが好きなの?
峯岸 それがあんまりよくわかんないんですけど、お酒飲んだ時だけは解放される気分になります。でもすごくめんどくさい女になるんですよ。
YOU じゃあバラエティに出る時も、黙って一杯ひっかけてきちゃったら? キャップ一杯くらいのウイスキーを入れてから出ちゃえば。
でも今はタレントもテレビだけじゃないから、バラエティのひな壇みたいな戦場みたいなところを楽しいと思えるのか、YouTubeで一人でしゃべっていたほうが自分の良さが出るのか選べばいいと思う。あたしも人数が多いのはあんまり好きじゃないんだけど、若いコのお話を聴かせてもらうのが自分の役割だと思っているから。それは楽しくやらせてもらってる。趣味はあるんだっけ? やりたいこととか。
峯岸 趣味も全然なくて。英語しゃべれたらいいなあとか、さっしー(指原莉乃)がプロデュースするグループのMVを監督したみたいに、クリエイティブみたいなこともしたいなあとか、興味は色々あるんですけど、自信がついてこなくて。

YOU 自信なんて持ったことないよ、あたし。
峯岸 ええ! いらないですか?
YOU 自信よりも、興味と役割かなぁ。バラエティに出る時も昔はもっとワーワー言ってたけど、今日はこの人がいるから任せてあたしは引こうとか。飲み会でしゃべらない人が多いなと思ったらしゃべる。TPOで自分の役割を考える。
それで、居心地をよくすることが上手になると勝手に人は集まってくる。あたしはそういうのが好きっていうか、遊びだと思ってるんだよね。仲間うちだとすごく我を出すんだけど(笑)。
今はまだその若さだから仕事をバリバリやっていたらいいけど、年をとった時に趣味がないと……キビしい。趣味ない男とかもマジでキビしいよ。

峯岸 うちの夫は逆に趣味がありすぎて、全然連絡が取れないからやきもきする時があるんですけど、それはいいことなんですね。
YOU それはすごくいいこと! 趣味がない男は浮気する!
峯岸 あははは(笑)。私のほうが全然趣味がないので、今すごく重い女になっているのが悩みです。夫かお酒しかない。
YOU うわー、キビしいわ。重い女って、相手にばっかり求めるでしょ。「私がこんなに愛しているのに!趣味ばっかりして!」とか。でも旦那が逆に心配するくらいにほっといて、ただ家を磨き上げていたほうが帰ってくるかもしれないよ。ちなみに料理はお上手……?
峯岸 い、いえ……。
YOU ほらなぁ。自分を磨くんだよ! ちゃんと努力して旦那が手放したくないと思うところを増やしていくの。趣味がないなら、家のことでもいい。
たとえばそのトレーニングのために、家に人を呼ぶようにする。掃除もやらざるを得ないし、ご飯も買ってきたものだけだとカッコ悪いから作るじゃん。旦那の仲間に「みなみちゃんの料理おいしい!」「いい子じゃん」と思わせる。そうしていると旦那がいなくてムカついても「行かないで~」じゃなくて、「どーする離婚する?」って言えるじゃん。2023年はまず料理からだな。

安室奈美恵ちゃんもキムタクも、実際なったら大変だよ。
峯岸 自信はないとおっしゃいましたが、自分のことは好きですか?
YOU 嫌いじゃないね。好きというか、「悪くない」。
峯岸 自分のことを好きになれないのも悩みで、それも自分に期待しすぎているんですかね。
YOU 期待が大きくなると大変だよね。安室奈美恵ちゃんもキムタクもそりゃ素敵だし憧れるけど、外から見てたほうがいい。ダウンタウンさんも面白くてずっと大好きだけどさ、あんな生き方大変だよ、ずっと働いてるじゃん。
奥田民生さんだったらなりたいかも。才能はあるけど、適度に力が抜けていて、たまには釣りをして過ごせていいなぁと思う。あたしは「ちょうどいい」でいたいの。
峯岸 YOUさんの「ちょうどいい」は私にとってはすごく高いレベルだと思うのでそのまま受け止めると危険なんですが、どうすればそこにいけるのでしょうか?

YOU ちょうどよくい続けるためにはね、集中力が必要なの。
一つひとつのことにちゃんと取り組んで、次に繋がっていかないと。やるべきことをちゃんとやる。でもこれはあたしにとっての「ちょうどいい」だから。各々の極め方があるかもね。
あたしの憧れはタモリさん。シャカリキに頑張っている姿は見せないけど、面白くて知識もあって、人によってまったくテンションが変わらなくて、それがあたしにとってのカッコよくてちょうどいい人のイメージ。だから汗をかくような頑張り方は違うなと思ったんだよね。
でもタモリさんと違って頭はよくないし、芸もないから、人への配慮だったり、番組の座組を読んだり、会話に入るタイミングを磨いた。ダウンタウンさんという超優良物件の元で学べたのは大きかったね。

峯岸 今日お話を聴いてちょっと安心したというか。感覚と才能だけでやっていらっしゃったらひれ伏すしかないですけど、そうじゃないんだなと。私もまだまだ努力しないといけないと思えたし、むしろ努力を避けて通れないことがわかりました。
YOU 足りてないところは何かで埋めないといけないよね。人から必要としていただくためには、常に磨いておかないと。だから先輩とお酒飲んでいる時も、ただ飲んでいるんじゃなくて、ちゃんと学ぶ。面白い言い回しとか、やりとりとか。それで何を考えてそう言ったのか聞きゃいいじゃん。その積み重ねで変わってくると思う。
峯岸 YOUさんの力んでいないところが憧れだったんですけど、芯の部分が強くてインナーマッスルをちゃんと鍛えているからこそできる立ち振る舞いなんだと思いました。まずはちゃんと生活することから努力しないと。今、家がすごく汚くて、私自身洗濯もほとんどしたことないんです……。
YOU マジで? 30歳のそれは重症。(取材陣に向かって)みなさん、ここにヤバイ女がいます!!
峯岸 どうか見捨てないでください……。今年、本気で頑張ります!!

* * *
峯岸さんの憧れの存在として、温かくも愛ある叱咤激励で締めとなったYOUさんとの対談。最後にメガネを普段どのように使っているのか聴いてみたところ、YOUさんらしい回答が返ってきました。
「老眼鏡とサングラスは、よくかけています。舞台を観に行く時には乱視と遠視が入っているものをしないと顔が見えない。でも今はなにもつけてなくて、なーんにも見えてません。普段はこれでいいんです。ご飯屋さんのメニューとかは後輩に音読してもらうので(笑)」
メガネの会社として、見るためのサポートをする存在でありたいと思っていましたが、「見えなくていい」というYOUさんの回答にハッとしました。千差万別の生活のなかで、メガネはどんなシーンで何のために必要とされるのか……。まずはYOUさんのように愛されることなのかも。JINSも自分を磨き続けていきたいと思います。