現在、JINSが48店舗(2022年5月末時点)を構える台湾は、世界でもサスティナビリティへの意識が高いことで知られています。そんな台湾でJINSが今年1月から始めたのが、メガネリサイクルプロジェクト『廢鏡新思』。
この名前は、現地でよく使われている四字熟語「費盡心思(=考えを尽くすこと)」からヒントを得て、JINSが独自で作ったもの。『廃棄するメガネを、新しい思いで再活用する』という意味を込めています。
第一ステップとしておこなったのは、まず家庭で不要になったメガネを回収することでした。
台湾の店舗では、今年1月7日から「古いメガネをリサイクルしてアート制作に参加しよう」というメッセージとともにメガネの「リサイクルボックス」を設置。そして、メガネ1本につき、300台湾元(日本円で、約1,200円)の割引券をお礼として贈呈することにしました。
最初に驚いたのは、その結果でした。
なんと、約3ヶ月の間に総数 20,000本以上ものメガネがみなさんから集まったのです。
1万6,000本のメガネを使って
回収時、集めたメガネで「何を作るか」については公表していませんでした。
しかし、使用していなかったメガネを「このプロジェクトのために」とご家庭で探し出してきてくれるお客さまはとても多く、「何が出来上がるのかなあ」とSNSで投稿してくれるなど、心待ちにしてくださっている方が多いこともわかりました。
JINSは、サスティナビリティを実践する手法も、JINSらしく斬新で楽しく「ユニークな体験を提供できるものにしたい」と考えています。
そして「費盡心思」、まさに考えを尽くした結果たどり着いたのは、「環境を大切にしよう」というコンセプトのもと、エコ活動とも縁深い台湾の芸術作家・李翊楷さんにアート作品を制作してもらうことでした。
そうして、約2ヶ月間をかけて李さんが完成させてくれたのが、「1万6,000本のメガネを使ったゴジラ」だったのです。
レンズやフレームを巧みに使い、作り上げられたボディは高さ2メートル。よく見ると、レンズひとつひとつがずらりと並び、ゴジラ色に塗装されていることがわかります。李さんも「メガネを材料にしたアートははじめて」と大きな熱意を傾けてくれ、その出来栄えにまたも驚かされることになったのでした。
1954年に初めて我々の前に姿を現して以来、人智を超えた存在として描かれてきたゴジラは、時に人間が乗り越えるべき壁として、時に人間の味方としてスクリーンで活躍。作品のテーマに環境問題をはじめとした各時代の世相を反映させながら、その時代を生きる人々を魅了してきました。
李さんの素晴らしいクリエイティビティで再現されたのは、誰もが知るキャラクターであり、「環境を大切に」というメッセージでもありました。
サステナブルなアクションの価値
5月には台北の大稻埕にて、完成した「ゴジラ」をお披露目しました。会場に集まってくれたみなさんも、そのメガネの変貌ぶりにとても驚かれていた様子です。こちらは、作家の李さん(写真右)とJINS台湾総経理(社長)の邱 明琪。
ここではさらに、「ゴジラと一緒に写真を撮って、SNSで投稿すると鉢植えをプレゼント」というキャンペーンについても発表。その場で撮影をしてくれる人がとても多く、会場のみなさんのおかげで、大いに盛り上がるイベントとなりました。
そして、さらに驚きは続きます。
今回メガネと交換するかたちで贈呈していた割引券、通常、同様のチケットをお配りしても5%程度しか使用されないのですが、なんと約90%も使用されていることがわかったのです。
毎日投稿されるゴジラの写真の数々とともに、この結果を受け止めながら、改めて「サステナブルなアクションで手に入れたものは価値がある」という意識が台湾のみなさんの間で広く根付いていることを深く実感することとなりました。
「メガネの“ゴジラ”」は全国へ
好意的なリアクションは、お客さまだけではありませんでした。
実は、リサイクル活動という趣旨に賛同して、JINSが店舗を構えているデパートやショッピングモールの方々がとても手厚く協力をしてくれたのです。フードコートや廊下などあらゆる場所を告知スペースとして使用させてもらうことができ、集まった総数はこのご協力のおかげでもありました。
完成した作品を見て「うちにも来てくれませんか」と台湾各地の都市が声をかけてくれています。台北に続く「襲来」となった台中市では、午後からのお披露目が待ちきれず、朝9時から来てくださった方も。また、「自分が提供したメガネは、どの部分に使われているのだろう?」と探しに来てくれる人も、増えているようです。
この取り組みを通して、あたたかいご協力に驚き、李翊楷さんの作品で“驚き”を返すと、さらに驚くような結果を得ることができました。メガネリサイクルを軸にした、うれしい連鎖が生まれたのです。
今後も、みなさんの協力の結晶である「ゴジラ」は複数の都市をめぐることが決定しています。各都市でも、「1万6,000本のメガネを使ったゴジラ」が多くの人々に受け入れられることを願っています。