おいしいコーヒーは、香りもおいしい。
みなさん、こんにちは! ONCA COFFEE & ROASTERY(以下ONCA)の武です。暑い日々が続いておりますが、皆さんいかがお過ごしですか?
ONCA(オンカ)は今年4月に前橋市の「JINS PARK」にオープンした、ロースタリーカフェです。『コーヒーを、「好き」に出会えるまでご案内します。』をコンセプトに、高品質なコーヒーをシンプルに提供しています。様々な味わいの豆を揃えているので、飲み比べていただくことで自分の「好き」に出会えるはずです。
私はONCAで豆の選定などを担当していて、コーヒー業界歴は20年以上です。コーヒー業界に足を踏み入れたのは2000年のこと。世界的コーヒーチェーンやアメリカのコーヒーショップで、長年バリスタとして従事し、2020年に帰国。縁あってJINSに入社し、ONCAは立ち上げから携わっています。
暑い日にはアイスコーヒーを飲みたくなる、という方は多いのではないでしょうか。ONCAでもお客様がアイスコーヒーを飲んで、涼んでいらっしゃる姿をよく目にします。もちろんお店で楽しんでいただくのもよいですが、ご自宅でも本格的なアイスコーヒーにチャレンジしてみるのはいかがでしょう?
コーヒー業界に足を踏み入れたきっかけの一つは、私の両親がコーヒーを家でよく淹れていたことです。家の中いっぱいに広がる豆の香りは、私にとって幸せの象徴でもありました。
皆さんにもぜひ、お店はもちろんご自宅でもアイスコーヒーを楽しんで、幸せな気持ちになってほしい。ということで、今回はおいしいアイスコーヒーの淹れ方をお届けします。
そもそもコーヒーの「おいしさ」とはなんでしょう? コーヒーのおいしさを作り出す、重要な要素となるのは「香り」です。お店で飲むコーヒーの香りって芳醇ですよね。ONCAに訪れるお客様からも、「とってもいい香り!」とお褒めの言葉をよくいただきます。どうしてお店で淹れるコーヒーの香りは高いのか。鍵を握るのは、豆の新鮮さです。
コーヒー豆は挽いてから時間が経つと、酸素に触れて劣化していきます。ONCAではコーヒーを抽出する直前に豆を挽くので、鮮度が保たれたまま。だから香りが豊かなんです。
ご自宅でも可能なら豆を挽く工程からスタートしていただくのがベストです。豆を細かく粉砕するグラインダーや石などで挽くミルといった器具を用意するだけで、コーヒーの香りが格段に変わるはず。おすすめは、全自動のものです。手動のものもありますが、慣れていないと挽くスピードや強さが一定にならないので、豆の粒度にばらつきが出てしまいます。豆の粒度を揃えることは、風味や味わいをよくするためにも非常に大切です。豆を均一に挽くことができる全自動式のグラインダーを活用いただくとよいと思います。
酸っぱさを楽しみたい方には、「エチオピア」
次に、豆の選び方について。実は同じ豆でもホットコーヒーとアイスコーヒーでは、味の感じ方が少し異なります。人間の味覚では、温かいものより冷たいもののほうが、酸っぱさを感じやすくなるといわれているんです。
ですから、アイスコーヒーとして飲むなら深煎りの豆やダークブレンドがおすすめ。深めに焙煎すると、酸味よりも苦味が強調された味わいとなります。ただし、コーヒーはあくまでも嗜好品です。あくまで皆さんのお好みに合わせて豆を選んでいただければと思います。
お客さまとお話していると「暑い日にはさっぱり爽やかなアイスコーヒーを飲みたい」という方もたくさんいらっしゃいます。そうした場合は、深煎りよりも、浅煎りの「エチオピア」がおすすめ。レモンのような柑橘の香りが特徴です。他にも、ONCAでは皆さんが好きな味と出会えるよう、様々な味わいの豆をご用意しています。同じ豆でもホットかアイスかで、味わいの表情は変わってくるので、いろいろと飲み比べてみてください。
フレンチプレスで、豆本来の味を楽しむ
ではいよいよ本題、おいしいコーヒーの淹れ方、抽出方法についてです。
コーヒーを抽出するには、紙や布などのフィルターを使用するドリッパーや、器具の内部にフィルターがついているフレンチプレス、コーヒーの粉を水につけこむやり方など様々な方法があります。まず、「豆本来の味を楽しみたい」という方にはフレンチプレスをおすすめしています。フレンチプレスでは紙や布でろ過せずに、挽いた豆をぎゅっと押し込んで抽出します。コーヒー豆の旨み成分である油分もそのまま残るので、豆本来の味を最も抽出できるやり方だといえます。
コーヒーの油分が苦手な方には、ドリッパーがおすすめです。フィルターとなる紙や布が油分や豆の雑味を遮断してくれるので、さっぱりとクリアな味わいになります。
アイスコーヒーのポイントは、「急冷」!
フレンチプレスやドリッパーでおいしいアイスコーヒーを作るポイントは、急冷させることです。サーバーやグラスにはあらかじめ氷を入れておいてください。抽出したコーヒーを即座に冷やす、というのが大事です。「ホットコーヒーを冷ましてから氷を入れてもよいのでは?」と思われるかもしれませんが、それでは非常に勿体無い。熱が冷めるのに時間がかかると、熱だけでなく風味までもが飛んでいってしまいます。急冷させると、風味や旨みが瞬時に閉じ込められるので、味わい豊かなアイスコーヒーとなります。
氷が溶けるぶんコーヒーの味は薄まりますから、ホットコーヒーを淹れるときよりも濃く入れるようにしてください。粉の量は変えず、お湯の量を減らしましょう。ドリッパーを使う際に私が推奨しているのは、粉が16gに対して、ホットコーヒーの場合はお湯を220cc、アイスコーヒーの場合はお湯を130ccです。フレンチプレスでアイスコーヒーを作る場合も、粉の量は変えずにお湯を少なくプレスして、抽出できたらすぐ、氷をたくさん入れたグラスに一気に注いでくださいね。
アイスコーヒーであれば、水出しがおすすめ。
続いて、水出しコーヒーの淹れ方について。個人的には、コーヒーをホットで楽しむなら豆本来の味を楽しめるフレンチプレスで抽出するのが好きですが、アイスコーヒーなら水出しのやり方で作るのが一番おいしいと思っています。水出しでアイスコーヒーを作ると、甘味と風味が出やすくマイルドに仕上がり、香りが口の中いっぱいに広がっていきます。ONCAで提供しているアイスコーヒーも、水出しで提供しています。
時間はかかりますが、やり方は至って簡単。まず、水出しコーヒー専用のボトルを用意します。フィルターの中にコーヒーの粉を入れて、水を注いで、一晩寝かせるだけ。寝かせる場所は冷蔵庫か、涼しい場所で。インターネットで【コーヒーフィルター ボトル付き】などと検索すると商品がたくさんヒットするので、好きなものを探してみてください。目安としては、100gの粉に対して、水を1.1〜1.2Lくらい入れて、12時間くらい寝かせるやり方を推奨しています。コーヒー豆が水を吸収するので、アイスコーヒーの出来上がりは800mLくらいの量になります。
ONCAではお客様によりおいしくアイスコーヒーを楽しんでいただくために、他にも色々と細かいルールを定めていますが、そのあたりは企業秘密です(笑)。時間が経つほど風味が失われていくので、ご自宅でも早めに飲んでいただきたいと思います。
ONCAで扱っている豆はハンドピックの作業でカビや虫食いがある豆を一つ一つ取り除いているので、水に長く漬け込んでも雑味が出ることはありません。ぜひ一度試してみてください。
最後に、夏にぴったりなコーヒーのアレンジをご紹介します。エスプレッソを炭酸で割った「エスプレッソトニック」です。抽出したエスプレッソにペリエなどの炭酸水を注ぐと完成。飲んだことがない方は味の想像がつきにくいかもしれませんが、エスプレッソの苦味と炭酸水のシュワシュワ感がマッチして、爽快な気分になるドリンクです。
エスプレッソの代わりに、コーヒーを濃いめに淹れていただければご自宅でも簡単に再現できますよ。レモンやライム、アプリコットのシロップなどを加えるのも、爽快感が増すのでおすすめです。
暑い日々はまだまだ続きますし、夏休みやお盆シーズンでご家族や親戚で集まる機会もあるかと思います。ぜひ、みなさんご自宅で本格的なアイスコーヒーに挑戦してみてくださいね。