衝撃だった「渋20代」との出会い

ハマ・オカモト(以下ハマ:)特集最後のゲストについて編集会議をしているときに「風磨くんはどうだろう?」って話になって、その場で直接LINEさせてもらったんだよね。で、その会議中に「ぜひ!」って返事をもらうという(笑)。

菊池風磨(以下菊池):連絡、めちゃめちゃうれしかったです。ここしばらくLINEのやりとりはあったけどなかなかお会いできていなかったので、ふたつ返事でした。ハマくんはいつも自然に僕の話を引き出してくれるから、大船に乗ったつもりでいこうと。

ハマ:はじめて会ったのはいつだっけ。櫻井翔さんと食事するときに連れていきたい後輩がいると言われて、それが風磨くんだったんだよね。で、最初に「僕のグループ知ってますか?」って言われて「そりゃ知ってるよ!」って(笑)。あれは……7年前くらい?

菊池:そうですね、ちょうどNintendo Switchが発売された直後だったから。

ハマ:ははは、懐かしい! 一時期、めちゃめちゃ一緒にゲームしてたね。

菊池:しましたねえ。僕、ハマくんとはじめて会ったとき、「なんだこの渋(シブ)20代は!」って心底びっくりしたんですよ。

ハマ:渋20代(笑)。

菊池:だって25歳とかですよね? 整えられたヒゲ、7:3にセットされたヘア、インパクトのあるメガネ……。「4年後にこうなれてる気がしない」って、ものすごい衝撃でした。それで黒髪に戻したり、ファッションを意識してみたり、めちゃめちゃ影響を受けましたね。

ハマ:えーっ、そんなふうに思ってくれてたなんて全然知らなかった。

「カッコいい」は10代でやり尽くした

ハマ:風磨くんは出会ったころから、ずっと変わらない空気感だよね。だからこそひとりの男として、そして大転換期を迎えているグループのメンバーとして、「変わる、続ける、変わる。」をテーマに話を聞いたらなにが出てくるんだろうってすごく楽しみでした。

あらためて、とくにここ数年はアイドルから俳優業、バラエティまで仕事の幅がものすごく広がってると思うんだけど……なにか変化のきっかけがあったのか、それとも戦略的なものなのか。どうですか?

菊池:僕、中2でこの世界に入ってからベースはずっと「モテたい」なんです。シンプルに、ちやほやされたい(笑)。そんな不純な動機で始めたんですけど……あの、これいろんなところで話してて。

ハマ:いいよいいよ、全然。

菊池:19歳のときに中居(正広)くんから「30歳までは仕事は断らずになんでもやれ」って言われたんです。年齢を重ねると「この仕事受ける?」って聞いてもらえるようになるし、ブランディングのために取捨選択する道もあったけど、その言葉を胸にぜんぶのオファーを受けてきました。

ハマ:中居さんの言葉が指針だったのか。仕事によっていろんな顔があって、いい意味でカメレオン的な動きだなと思いつつ見てました。

菊池:そのやり方がぼくには合っていて、いい方向に進めた気がします。いろんなお仕事をしていると、バラエティを見た方からドラマの役をいただいたり、舞台を観た方からバラエティに声をかけていただいたりするんですよね。

ハマ:へえ! ジャンルを超えて。

菊池:はい。それがおもしろくて、さらに全部受けたくなっちゃってるところです。

ハマ:なるほどね。でも、ゴールが「モテ」ならひたすら「カッコいい菊池風磨」でいる道もあるわけじゃないですか。そうはならなかった?

菊池:10代はそうだったんですけど、しっくりこなくて。20歳くらいでやり方を変えたんです。

ハマ:早くない!?(笑)

菊池:デビューが16歳だったのが功を奏したというか、いろいろな現場を経験したからこそ早めに気づかせてもらえました。「突き抜けてカッコいい人はカッコつければいいけど、おれくらいだったら『おもろい』に振ったほうがいいな」って、そこからためらいはなかったですね。

ハマ:はー。僕もデビューが19歳だからその感覚は多少わかるけど、それにしても達観してるなぁ。

菊池:デビューからの4年で自分なりの「カッコいい」をやり尽くしたから、それがいいフリにもなってるんですよ。芸人さんみたいにおもしろいことはできないけど、僕や事務所のイメージ的にギャップあるから。おトクにやらせてもらってるなと思います。

変わらぬ自分と、変わる関係と

ハマ:バラエティでの「おもろい」風磨くんに、そんな考えがあったとは。

菊池:あ、でもそれは男子校出身なのも大きいです。あそこは「おもしろいやつが勝ち」の場所(笑)。中高6年間男子校だったので、完全に人格形成されましたね。

ハマ:たしかに風磨くんは、なんというか……少年性があるよね。これって男子校の空気なのかな。

菊池:胸を張って言うことじゃないけど、中身はあのころと変わってないんです。変わらないまま、ありのままの自分でずっと仕事をさせてもらってます。

ハマ:仕事のときと素の自分の差が激しいと、しんどいからね。僕もそうだけど、風磨くんをテレビで見てても「自然体だな」と思うよ。

菊池:それもたぶん、友だちの影響が強くて。テレビで僕を見た友だちに「うわっ、なにこいつ」って思われたくないんですよ。

ハマ:ああ、わかる! おれも幼稚園から中高までの友だちといまだに仲いいから、変な感じに振る舞ったとき「これ見られたくないな」ってすぐ浮かんでくる(笑)。

菊池:目の前に選択肢があるとき、「こっちを選んだらあいつはどう言うかな?」って……。

ハマ:「友だちモノサシ」発動するよね。いや、めちゃめちゃわかるなぁ。

菊池:だから僕、はじめは嫌われてもいいと思ってたんです。「友だちモノサシ」に見合う、素の自分でやってみて、それでダメだったらこの仕事が合わないってことだから。でも、ありがたいことにこうして呼んでもらえたり好いてもらったりするようになると……今度は嫌われたくなくなってきて(笑)。

ハマ:ははは! 逆にね。

菊池:でもその「嫌われたくない」が、ふしぎと苦しくないんです。それはきっとウソをついてないからだろうなと思います。

ハマ:うんうん、なるほど。「この仕事、どう思われるかな」って気持ち、メンバーに対して感じることはない?

菊池:うーん、それはないですね。仕事について報告するのもされるのも、照れくささすらあるかな。

ハマ:それもすごくわかる。でもさ、関係性も変わってきてない? 最初はもっと仲よかったでしょ? うちなんかはまさにそうで、デビュー当時は肩組んでインタビュー受けてたのに、もはやオフではほぼしゃべらない。

菊池:肩組んで(笑)。僕たちは「デビューするよ」って突然集められたメンバーだからOKAMOTO’Sさんの関係とはちょっとちがうと思うけど、たしかに昔はもう少しお互いについて共有してたかな。いまは、うまいラーメンの話とかばっかりっすね。

ハマ:あ、そういう雑談はするんだ? 

菊池:「その話ならできる」って感じです。だから、ラーメン屋を探しちゃう自分がいるんですよ。これはみんな知らないだろうってネタを前日の夜に用意しておいて、「静かになったときにこの刀を抜こう」みたいな。

ハマ:わざわざ準備するの(笑)。でも、どういう形にせよ関係性は変わっていくよね。決して仲が悪くなったわけじゃなくて。

菊池:うん、ホントにそう思います。

月6日しか仕事がなかった、からこそ

菊池:逆に聞きたいんですけど、ハマくんはメンバーとの関係性以外で「変わったこと」ってありますか? 転機になったできごとだったり。

ハマ:ああ……それでいうと、プロとしての自覚を持った日、というのがありまして。

菊池:おお。

ハマ:僕らは中高の同級生でバンドを始めて、そのまま19歳でデビューしたんですよ。だから最初の3年くらいは、ただ友だちとやれて楽しい、みたいな感じだった。いま思えば責任感が足りてなかったんだよね。

でも2013年のツアーで熊本に行ったとき、終わった後のライブハウスの前で絵に描いたような「制服を着た女子高生」がひとり、ベースを背負ってて。まさにNUMBER GIRLの『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』のジャケットみたいだったんだけど、その子が「これまで音楽には興味なかったけど、OKAMOTO’Sを聴いてベースを買いました」って言ったの。

菊池:わ、すごい……!

ハマ:彼女と相対したとき、ぐっと責任を感じたというか。「人ひとりの人生を変えてるじゃん。ちゃんとしなきゃ」と思った。それから「友だちモノサシ」ともう一軸、「僕らのことを好いてくれてる人がどう思うか」を考えるようになりました。

もちろんライブに集まってくれるお客さんに対しても実感はあったけど、やっぱり直接言葉を交わすとね。あれは結構、ターニングポイントだったな。

菊池:めちゃめちゃ素敵な話ですね。

ハマ:風磨くんのターニングポイントといえば? いろいろあるとは思うけど。

菊池:そうですね……原動力になってるのは、仕事がほぼなかった時期ですね。忘れもしない、2018年9月。一ヶ月の稼働日数が6日だったんです。

ハマ:ええっ!?

菊池:しかも2018年って、僕らが24時間テレビをパーソナリティを務めた年なんですよ。「24時間テレビの次の日から仕事の電話が鳴り止まないぞ、忙しくなるぞ」って言われて肩ぶん回してたのに、翌月「あれ?」って。震える手で数えましたもん。

ハマ:何度数えても6日しかないぞと。

菊池:10月も10日くらいで、11月もさして忙しくなく。だんだん気持ち悪くなってきて、おかしくなりそうでした。

ハマ:それはなるよね……。しかも6年前って割と最近じゃない? デビュー直後とかじゃなくて。

菊池:ホント急になくなりました、特に理由もないのに。それで僕、筋トレを始めたんです。

ハマ:ん? 筋トレを?

菊池:なにか変えなきゃ、自分を変えなきゃと思って。そこからほぼ毎日ジムに行き始めたんですけど……よく考えたら、自分の意志でなにかを始めるのがデビューしてからはじめてだったんですよね。

ハマ:窮地に追い込まれて、はじめて自発的に動いたんだ。あ、もしかして鍛えた結果、あの『anan(アンアン)』の表紙につながった?
(編注・2022年8月号。雑誌『anan』の名物企画SEX特集。菊池さんは表紙を飾り、その彫刻のような身体が話題になりました)

菊池:そうなんです。よし鍛えるぞと思ったときに、「『anan』出〜ちゃお!」と思って。

ハマ:えええ?(笑)

菊池:仕事のない自分にムカついてきたから、身体を変えて、バキバキにして……。

ハマ:「『anan』出〜ちゃお!」って? ははは、ちょっと、どういう発想。

菊池:4年後、ぶじ有言実行できました。いまは、あのときに比べたらどれだけ忙しくても余裕だし、ハッピーだし、とにかくありがたい。だから振り返ると、あのどうしようもなく苦しい時期があってよかったなと思いますね。

「パワートリオ」に向けて、絶賛、変化中

ハマ:6年前の窮状はかなり意外だったけど、風磨くんはもともとキャリアを計画的に考えるほう? 流れに身を委ねるほう?

菊池:これまでは「売れたいな」くらいでした。レールの上をしゃかりきに走って……言うなれば、宿題をやってる感覚だったんです。先輩たちがアリーナ公演をやってたからアリーナでやれるようにがんばろう、ドーム公演をやってたからドームに挑戦しよう、みたいな。

ハマ:先輩たちがやってきたことを目標にするスタイルで。

菊池:はい。文化の継承という意味ではすばらしいことなんですけど、グループに動きもある中で、ここから先は自分で課題を見つけなきゃいけないフェーズだなと感じています。そうじゃなきゃ、きっとこれ以上は前に進めない。

だから、最近は自分で企画書を書いたりしてるんですよ。通ったり通らなかったりだけど、「こういうことがやりたい」ってまとめて。

ハマ:へえー、企画書を! それはグループでの活動の?

菊池:そうですね。あと、「2年後にはこうなっていたい」って具体的な未来を描くようにもなりました。

ハマ:それはすごいね。変化の中で主体的に考えるようになったんだ。

菊池:ようやく、ここ1年くらいですけどね。できればもっと先の姿まで考えたいんですけど、未知な部分も多いのでいったん2年で(笑)。

ハマ:企画を考えたらメンバーに提案するの? それも照れたりする?

菊池:いえ、これからに関してはよく集まって話してます。僕から「こういう企画はどう?」って提案したり、逆に「こういうことを考えてるんだけど」って言われたり。

ハマ:おお、メンバーの関係性としても大きな変化だ。じゃあ、最近はラーメンの話だけじゃ……。

菊池:なくなりました(笑)。個々の仕事をやってるからこそ、あれもやろう、これもいいね、今の僕らならこんなこともできるってアイデアがポンポン出てくるから楽しいです。グループも個人も、仕掛けたいことがたくさんある。だから……じつはいま、かなりわくわくしてるんです。

ハマ:めちゃめちゃいいじゃない。「『anan』出〜ちゃお!」みたいな?

菊池:ははは! それに近いです、やっちゃおーって(笑)。ただ、仕事がなかったときと比べると、中島(健人)の脱退は受け入れられたんですよね。しっかりと話し合ったし、せっかくだからいい転機にしようと思って、今を楽しんでます。

ハマ:最高のターニングポイントだね。風磨くんはこれからトリオになるわけだよね? バンド界には、「パワートリオ」って言葉があって。

菊池:「パワートリオ」!

ハマ:そう。バンドというとボーカル・ギター・ベース・ドラムの4人で考えがちだけど、「すごい3人グループ」って意外と多い。風磨くんたちは、そっちに向かってるんだなって思いました。

菊池:うわ、すっごいうれしい……。みんなまだまだ若いんで、どんどんやっていきます。

ハマ:うん、楽しみだなぁ。久しぶりだったけど、いいタイミングで話ができてよかったです。

***

「ハマくんと出会ってから、おしゃれなメガネを見ると絶対にハマくんを思い出しちゃう」と笑う菊池さん。撮影のときには、「これが似合うかな」と迷わずサングラスを手に取る姿が印象的でした。

「とくに黒髪のときは、伊達メガネでコーディネートすることが多いです。メガネを選ぶときはつい、『ハマ·オカモトならこれを選ぶかな?』って考えちゃいますね(笑)」

メガネを楽しんでいただくため、デザインにとことんこだわったり、さまざまなブランドやアーティストとコラボしたりしている私たち。楽しそうにメガネとファッションについて語る菊池さんの姿に、思わず頬がゆるんでしまいました。