SHIBU みなさん、こんにちは! ふだん「墓場のラジオ」「月曜トッキンマッシュ」などのPodcastを制作している、SHIBUと申します。今回は、「聴く」ことの大切さが伝わってくるPodcast番組をセレクトしました。Podcastを初めて聴くという方にもおすすめのラインアップにしています。よろしくお願いいたします!
1本目:ハハとムスコの小話

まずご紹介するのは、思春期を迎える前の息子とそのお母さんが、なにげない会話をしている貴重なPodcast番組です。
「今年なにがあった?」っていう振り返りとか、「スマホが欲しいんだけど」っていう相談とか。日本中、世界中で溢れているはずの会話なのに、なんだか魅力的に感じます。「自分がこどもの頃もこうだったのかな」って思うと懐かしくて、ほっこりするんですよ。お母さんが耳を傾けて聴いてくれるっていうのは、きっと多くのひとにとっての原風景といえるシチュエーションでもあるのではないでしょうか。
この番組の「聴き上手」はお母さんです。息子さんの言葉に対して、僕だったら「いやいや、そうじゃないんじゃない?」って言ってしまいそうなんですが、お母さんは絶対に言わない。伝えたいんだけど今のこの子には言わない言葉っていうのが、感じ取れます。
聴く力=テクニックだと思われがちですけど、お母さんがこどもの話を聴く力っていのが一番原始的なものだと思っていて。そこには愛しかないんです。生意気を言っても、知ったかぶりをしても、全部受け止めて聴いてくれる。ちゃんと耳を傾けて待ってくれる。会話というものにキーワードがあるとするなら、「愛」に勝てるものはないんじゃないかなと思います。
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2本目:香りと言葉のラジオ「NOSE knows」

香水やフレグランスのお店『NOSE SHOP』の代表・中森友喜さんと、共感を呼ぶエッセイや脚本、コピーライティングで話題のライター、夏生(なつお)さえりさんが香りを言語化していく番組です。香り初心者のさえりさんが、香りに関することばを教わっていくんですが、さえりさんの返しがとにかく抜群にうまい!
返しの語彙が豊富なところ、リスナーが気になることを的確に挟んでくれるところからも、ほんとうに聴き上手だと思います。「これ、あまり知らないんですけど、もう少し詳しく教えてもらっていいですか?」って、リスナー目線に立って会話をつないでいく。聴いているひとを意識した聴き方をしてくれますね。
こういう「詳しいひとに話を聴く初心者」のスタンスって、「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」さんが確立したPodcastのひとつのスタイルだと思うんです。コテンラジオさんは、歴史に全く詳しくない人が、(歴史を)知り尽くした人に教えてもらうという番組。さえりさんはそのスタイルを軽やかに踏襲しているんですよね。リスナーが置いてけぼりにならないように寄り添ってくれています。
さえりさんの聴く力があるからこそ、中森さんから膨大な知識が引き出されていくシーンもしょっちゅう出てきます。さえりさんの聴く態度に触発され、思わず中森さんのテンションが上がってしまう瞬間があって。どんどん話がふくらんでいきます。
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3本目:丸山ゴンザレスの現場の音

つづいて、『丸山ゴンザレスの現場の音』です。丸山ゴンザレスさんは、テレビやYouTubeでもご活躍中のジャーナリスト。ふだんから世界中の裏社会や危険地帯の取材をされています。そんな丸山さんが音声で配信しているこの番組、相当おもしろいです!
というのも薬物中毒になった方のお話など、ちょっと危なくて普段聴けるはずのない会話が聴こえてくるんですよね。それが、なにげなく生きている僕らにとって想像以上に刺激的なものに感じられます。
丸山ゴンザレスさん自ら危険な場所に踏み入っていくんですが、おそらく小さいレコーダーだけでインタビューをされていて。話す人の心理的なハードルを下げるために、収録機材を最小限に抑えているんですよね。そうすると語り手はリラックスしちゃって、思わず「喋ってしまう」んです。でも例えばこれが、大きなマイクが目の前にドンと置かれて、固定カメラで顔を撮っているような環境だと、声を小さくしないと話せないようなことやリアルな本音は聴き出せないと思う。相手の本音をどう探るのか、どう引き出すのか。映像というビジュアルなしに、音声のみであることをむしろ武器にして、深く「聴く」ことを突き詰めている番組です。
ほかでは「ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision」が有名ですが、そうした音声だけの「油断した会話」を聴けることはPodcastの強みでもありますよね。この番組も思わず聴き入ってしまうこと間違いなしです。
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4本目:美のひらめきと出会う場所 〜資生堂 S/PARK〜

4本目は『美のひらめきと出会う場所 〜資生堂 S/PARK〜』。資生堂の社員・研究員の方を中心に、専門家のゲストを招いて「美」に関する内容を話している番組です。
この番組からは、プロじゃなくても、誰でも「聴き上手」になれるんだということを感じます。
『美のひらめきと出会う場所 〜資生堂 S/PARK〜』における聴き手は本業が研究員の方。プロのインタビュアーではないはずなのに、専門家の方との対話でも自然なやりとりが聴こえてきます。きっと、社員の方が日々「美」を追求しながらお仕事をされていて、その行為自体が好きだからだと思うんですよね。「『美』という一貫したテーマを突き詰めたい」っていうピュアな想いがあるからこそ、専門家と対峙しても自然な会話を繰り広げられる。しかも変に取り繕わないで話しているので、社員の方の人柄が見えて思わずファンになっちゃいます。
聴く技術の有無ではなくて、結局は好きという気持ちの熱量さえあれば、プロ・アマチュアに関係なく誰でもよい聴き手になれるんだと思います。
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5本目:カンベとアラタのわいわいレディオ(仮)

最後は打って変わって友達同士の気楽な雑談なんですが、そこが超おもしろい番組です。
King GnuのMVを中心に、映像やプロダクトデザインなど幅広く活躍しているクリエイティブレーベル『PERIMETRON』。そこに所属するふたりのクリエイターが話すPodcastです。
この番組には、おそらく明確なテーマやコンセプトがありません。正直、彼らが何を喋っていたか、多くの方があんまり覚えていないはずです(笑)。でも「何を話しているか覚えてない番組」って最高の褒め言葉なんですよ。テーマもないのに、思わず次も聴きたくなるっていうことなので。
この『カンベとアラタのわいわいレディオ(仮)』は「話芸」に支えられている会話だと思います。日本古来の文化である、落語や漫才もそう。僕は落語が大好きなんですけど、会話だけで情景や登場人物の心情までを鮮やかに想像させるんですよね。それはもう、連綿と続いている、おしゃべりコンテンツの文化で熟成されてきた「芸」なんです。
ただむやみに会話するわけではなくて、カタルシスがあるというか。会話のキャッチボールで例えると、わざと予想外のところにことばのボールを投げつつも、最後に話したいところに着地しているような感覚ですかね。なんの話をしてるかはどうでもよくて、そのひとたちの会話自体がとにかく気持ちいい。
一見、「聴き上手」ではないように感じるんですが……。そこには聴く力と、喋る相手への絶対的な信頼関係があると思います。聴く力があるからこそ的外れな方向にボールを投げられますし、相手への信頼があるからこそ「どこに投げても追いかけて取ってくれるだろうな」と冒険できる。そういう意味では、じつは雑談こそが1番高度な「聴く力」を求められる会話なんですよね。
テーマや有益な情報はもしかしてあまり重要ではなくて、そのひとたちの会話に魅力があれば、思わず聴いてしまうコンテンツが生まれるんだと思います。
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以上、5番組です! いろいろな視点から「聴き上手」な番組を選んでみました。おもしろい番組との、新しい出会いが生まれていれば幸いです。気になった番組の、気になった回から聴けるのがPodcastのいいところ。ひとつでも聴いてたのしんでいただけたらうれしいです!
【プロフィール】
SHIBU
TOCINMASH主宰、株式会社雑談代表。2006年よりPodcast制作を開始、2022年「Podcast Weekend」立ち上げに協力、同年新たな活動拠点として「雑談」を創設。主な受賞歴として Apple Best Podcast 2016, 2019受賞、JAPAN PODCAST AWARDS 複数作品ノミネートなど。