「我が道をいこう」の意識はない

——事務所の設立や大阪進出、今年に入ってからは音楽活動の開始など、次々と新しい話題を届けてくれる姿にワクワクとします。「常に新しいことを」というのは意識されていますか?

結果として「新しいね」「めずらしいね」と言われることも多いんですが、一つひとつは自然な流れで決断していることがすごく多いように思います。

「こうすれば、こうなるだろう」と予測はするけれど、あまり意識的に「これまでになかったことをしてやろう」と熟考して行動に移しているわけではないんですよ。そこは、佐久間さんも似ているところがあるんじゃないかな?と勝手に想像するんですけど、どうでしょうね。

自分たちで事務所を立ち上げたのも、特に「いつかは、そうしよう」とプランがあったわけではなかったんです。これまでもいろんなタイミングで、入れそうな事務所があればきっと所属していたと思うんですよね。ただ若手芸人って事務所に所属すると、どうしても制約やノルマ化されていることも多いんです。

たとえばライブのチケットは自分である程度購入して、お客さんを呼ばないといけなかったりするんですが、わたしは会社員と兼務していて平日の明るい時間のライブは入れないし、相方のニシダは大学を卒業せずにずっと大学生をやっていたんで、そんなチグハグな関係のままで事務所に入れない! と(笑)。ご迷惑もかけてしまうので。

結果としてフリーで活動する期間が長くなって、そのなかでなにかもっと大きなことができるなら……と、法人化することにしました。

——必要に応じた決断が結果的に、他にはない「ラランドらしさ」「サーヤさんらしさ」につながっているんですね。それぞれの決断について、どなたかに相談することはありますか?

誰かに相談したり、タイミングをうかがったりすることはあまりなくて、「直感」で決めてしまうことも多いです。「大阪でお笑いの活動をしたい」ということに関しても、割と「やりたい」と決めてマネージャーやニシダに話して、「いいね」と言ってもらった感じでした。まあ、普段からニシダに意見なんてないんですけどね(笑)。

——ははは(笑)。それでも「別にいいけど」ではなく「いいね」と肯定してくださるのはすごくいいですね。

たしかにそうですね(笑)。否定するには代案が必要で、彼には自分の意志がないので言わざるを得ないところもあるのかもしれないですけど。でも「いいね」とは言ってくれるんですよ。そこがおもしろいところですよね。

いくつかのわらじを履くということ

——お笑いの活動と並行して、広告代理店でのお勤めや転職、IT企業での勤務……と二足、三足のわらじは、やはりご苦労も多かったでしょうか?

それが、まったく苦労は感じてないんですよ(笑)。

——そうだったんですね! それは驚きました……。

睡眠が多少削られることはあったんですが、20代前半の体力がある時期をそういうスタイルで過ごしてきたので、わりと元気にやれていましたね。残業も多くて23時ぐらいに帰ることが多かったんですが、そこからお笑いのことを考えるのは特に苦じゃありませんでした。

『M-1グランプリ』を機に、テレビの仕事もいただけるようになって、あまりにも有給をいただくことが多くなってしまったので、結果的に1社目、新卒からお世話になった会社を辞めて転職することにはなったのですが。

——会社員を並行してやられていたのは、ご両親に学費を返す仕送りがしたかったからだとうかがいました。その頃にはテレビのお仕事も順風満帆にいき始めてたと思うのですが、お笑いの活動に絞ることなく転職の道を選ばれたのはどうしてだったんでしょう?

すでにその頃、コロナの影響が出ていたこともあったと思います。やっぱりお笑いの仕事って不安定なんですよね。それまで会社員の給料はすべて実家への仕送りに当てていて、わたしはそれを続けたかったので、転職をして会社員を続けることにしました。

芸人さんがみんな経済的に不安定になっていくなかで固定給があったのは、精神的にも安定した状態でお笑いに向き合うことができてありがたかったですね。「収入の柱は、いくつかあったほうがいい」っていう考え方にみんながシフトしていく流れも目の当たりにしました。

——時代は流れて、芸人さんも「芸の道での一本立ち」ばかりが成功ではないのかもしれませんね。

そうですね。兼業やフリーでの活動を「苦労」と感じることはありませんでしたが、「壁」があったとしたら、「フリーで片手間でやってるやつが、ポッと出てきて」「趣味でお笑いやってていいね」みたいな周りの目だったと思うんです。それはこれまでの「あたりまえ」ではないから。

そういう意味では、大阪にも進出して「ちゃんとお笑いの番組にいっぱい出たい」と舵を切ったのは必然でいい決断だったと思いますし、世間や芸能界の「あたりまえ」が少しずつ変わりはじめているのは追い風だと感じますね。

今は「あたりまえ」が動き出す過渡期

——タレントさんの独立や、副業も話題になることが多くなりました。まさに、サーヤさんの方へと時代が寄ってきたような感覚がありますね。

ちょうどいま、いろんな価値観がアップデートされていく過渡期なんだと思いますね。それは働き方だけじゃなく、よく「コンプライアンス的に」と指摘をされるような表現やイジり方、番組の演出だったり、そういったことも含めて新しい価値観を受け入れたうえで行動していくというのは重要だと思います。

だけど一方で、そういう新しい価値観を自然と持てるということは「恵まれてるんだ」ということも忘れちゃだめだと思うんですよね。

——恵まれている。

たとえば、自由に企業に就職できたり、そのうえでやりたいことに取り組めていることもそうですし、わたしは大学でジェンダーやSDGsのことだったり、いまメディアが一生懸命打ち出している「こうあるべきだよね」っていうテーマを大学2年生ぐらいから授業で充分に叩き込まれてきたんです。「これがグローバルのスタンダードだよ」と。収入の柱をいくつか持つのもそれのひとつですよね。



でも、そんな新しい「あたりまえ」を教わって社会に出られたというのは、本当にありがたかったなと思うんですよ。恵まれている世代ですよね。逆に言うと、そういった教育を受ける機会のなかった人は自分で気づいて、価値観を無理矢理アップデートしなくちゃいけない。誰もが急にできることではなくて当然だと思いますし、それを「古い」みたいな言い方で批判することはあまりしたくはないとも思うんですよね。

——教育の大切さを感じますね。それから、サーヤさんのように自身を俯瞰したり環境が異なる人について想像することの配慮も。

自分はこの価値観だけど、そうじゃない人がいて当然、という前提は大事かもしれませんね。でももちろん、「間違ってる」と思うことについては曲げる必要はないとも思います。誰かが傷つくような表現でその場を笑わそうとしてる人がいたら、同調しなくていいと思いますし、これが今までの「あたりまえ」だからと押し付けられるようなことがあってはといけないと思うんですよ。

たとえば男性の育休の問題であったり、制度があっても空気が変わらない、だとかそういうことってよくありますよね。そういうときはバカなふりして「でも、こういうものですよね」って主張できるのが本当はいちばんいいですよね。すごく難しいと思うんですけど。

藤井隆さんのかっこよさ

——サーヤさんが目指す先に、「こんなふうになりたい」と思うような方っていらっしゃるのでしょうか?

もちろん尊敬する人はたくさんいます。たとえば芸人でいうと、藤井隆さんはお笑いのときはめちゃくちゃお笑いの顔で、演技のときは演技の顔だし、音楽もちゃんと“一歌手”というスタイルでやられていますよね。

どこに行ってもプロというか、芸人からすると「お邪魔している」立場になる他分野の現場・人に失礼がないような立ち振る舞いをされていて、すごくかっこいいなと思います。芸人って、「まあ、芸人が本業なんで」みたいに、つい保険をかけるのが楽だと思うんですけど、やるからにはわたしも藤井さんのように、その分野の人に失礼がないようにちゃんとやりたいんですよね。

——藤井さんもまた「あたりまえ」を崩してこられた方ですよね。これから新たに挑戦したいことはありますか?

今すぐではないですけれど、洋服も好きなのでいつか作りたいって気持ちはありますね。だけどそれは、10年後とか20年後とか……。テーマがちゃんとできて、自分の中でちゃんと核ができたら、挑戦してみたいです。

わたしはきっと、たくさん売れるものは作らないんですけどね(笑)。自分らしさを大事にしながら、敬意を持って踏み込んでいくのが「あたりまえ」を変えていくいちばんいい方法かもしれないと思います。

* * *

 最後に、サーヤさんにJINSへの印象を聞いてみました。

「外ではコンタクトですが自宅ではメガネなので、実はずっとお世話になっているんですよ。選ぶポイントは、視力がかなり低いので、レンズに少し厚みがあってもカッコよく見えるもの。そういうアイテムがちゃんとラインアップされているのは嬉しいですね。

サングラスもカッコよくて愛用してます。最初は『芸人がサングラスするなんて、茶化されるだろうな』と思ってたんですけど、堂々とかけてたら、意外と何も言われなくて(笑)。似合ってればいいんだってことがわかりました。」

お話を聞いて、想像力と俯瞰して見る力で空気を読みながら、それでも自身の「やりたい」は決して諦めない強い心を持った方なのだと改めて魅力を感じました。
JINSのアイテムも、そんなサーヤさんの「やりたい」「身につけたい」の一つであることをうれしく思います。

否定ではなく、新しい「あたりまえ」を提案し前を歩いていくような牽引力。
ブランドとしても、とても共感する姿勢であり、こうありたいと願う姿でした。

【プロフィール】
サーヤ(ラランド)
1995年生まれ。上智大学在学中に、相方・ニシダとお笑いコンビ「ラランド」を結成。大学4年では数々のタイトルを総なめにし、M-1グランプリ2019、2020で準決勝へ進出。2021年には個人事務所「レモンジャム」を立ち上げ、代表取締役社長に就任。バンド「礼賛」では川谷絵音らとともにCLR名義で参加し、作詞作曲とボーカルを担当。テレビ・ラジオで活躍するほか、YouTube公式チャンネル「ララチューン」も配信中。

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