緑あふれる敷島公園で、時間を忘れてのんびりお散歩

まず取材班が向かったのは、日本三大河川のひとつ、利根川のほとりにある敷島公園。散歩やピクニックを楽しめる公園エリアのほかに、野球場、サッカー場、陸上競技場などのスポーツエリアも併設されている、広大な公園です。

公園にある木としてはめずらしい、約2,700本もの「松の木」が群生している敷島公園。この日もたくさんの方が憩いに訪れていました。
松林がつくる不思議な静寂。風もおだやかな平日の昼下がりに聞こえてくるのは、取材班の足音だけ。市内の喧騒とはほど遠い、おだやかな時間が流れていました。

園内のベンチに座ってピクニックを楽しんでいる人もちらほら。青空のもとで食べるご飯は家で食べる時よりも美味しく感じられることでしょう。
やわらかい木漏れ日に照らされた散歩コースをしばらく歩いていると、松林を抜けた先にボート池がありました。ゆらゆらと揺れる水面を、カモが気持ちよさそうに泳いでいます。

池のそばにはエサが販売されており、かわいいカモたちにごはんをあげることもできます。休日にはスワンボートを漕ぐ家族連れの姿も多く見られるそうです。

そして敷島公園には外せないエリアがもうひとつ。600種類のバラが植栽される「敷島公園門倉テクノバラ園」です。

園内には約600種7,000株のバラが植栽されており、見頃となる春・秋には、それぞれ「春のばら祭り」「秋のバラフェスタ」が開催されます。期間中の夜間にはライトアップもされているのだそう。華やかな赤色だけではない、彩り豊かなバラの満開が待ち遠しくなります。

【敷島公園】
群馬県前橋市敷島町66番地
TEL:027-234-9338(群馬県立敷島公園 )027-232-2891(前橋市ばら園管理事務所)
定休日:無休(園内各施設は休業あり)。

前橋随一のカルチャースポット、フリッツ・アートセンターで取りもどす「子どもごころ」


散歩のあとに編集部が向かったのは、敷島公園すぐそばにあるフリッツ・アートセンター。バラ園からは歩いて5分ほどで到着します。

現在のコンセプトは、「絵本みたいな場所」。
店内には、前橋出身の店主・小見さんが国内外から集めた選りすぐりの絵本がびっしりと並べられています。

「あの時に『タンタンの冒険』と出会ったのが、今の仕事に繋がっているんです」と話す小見さん。
『タンタンの冒険』はベルギーの漫画家エルジェが描いた世界的にも有名な絵本。小見さんが9歳の頃、学校に馴染めずふさぎ込んでいた時代に偶然出会ったという1冊です。主人公の少年・タンタンと、相棒である白い犬・スノーウィが世界中を旅しながら、次々に起こる事件を解決していくその姿にのめりこんでいったのだそう。

店内には、絵本はもちろんタンタンの公式グッズも置かれています。なんと、日本で公式グッズを取り扱っているのはここ前橋のフリッツ・アートセンターと原宿にあるTHE TINTIN SHOP TOKYOの2店舗のみなんだとか!

タンタンをきっかけに音楽や文学などのアート作品にも魅了されていった小見さん。自分と同じように、絵本をきっかけにアートと出会う子どもが増えてほしい——そんな思いでつくったこのお店は、単なる絵本屋さんにとどまりません。店内の一角には「フィーリングで選んだ」という、世界各国、さまざまなジャンルのCDが並べられています。
さらに奥へと進んでいくと、天井が高く開放感のあるギャラリースペースが。ここでは絵本の原画展示のほか、作者自ら行う朗読会や、生演奏とともに語られる怪談会などのイベントが開催されています。

「絵本みたいな場所に来て、子どもの頃の“無敵感”を思い出してほしいんです。損得抜きで、人の目を気にせずに自分の好きなことだけやっていたあの頃を」

歳を重ねるごとに薄れていく、純粋無垢な気持ちや解放感。ひょっとすると、ここを訪れるべきなのは子どもではなく、むしろ大人になってしまった私たちのほうなのかもしれません。

「空き地で子どもたちが新しい遊びを発明するみたいに、使いかたを工夫しながら、壊してはつくっていきたい」という思いから、お店のコンセプトや店内のデザインは定期的に変えているのだそう。

「『絵本みたいな場所』に続く新しいコンセプトもいま考えているところです。次に来た時には、また違う印象になっていると思いますよ」

オープンして30年以上が経つ今なお店内のコンセプトを変えながら、年齢に関わらずお店に集う全ての人の子どもごころをくすぐり続けるフリッツ・アートセンター。日々進化を続けるこの場所で、絵本の世界にたっぷりと浸ってみてはいかがでしょうか。

【フリッツ・アートセンター】
群馬県前橋市敷島町240-28(敷島公園内)
TEL:027-235-8989
営業時間:平日 11:00〜18:00
休館日:火曜日(祝日の場合はその翌日)

愛も温度も高い、前橋随一のサウナ施設

つづいて編集部が訪れたのは、「毎日サウナ」さん。

サウナ室に入って、まず目に飛び込んでくるのは薪ストーブです。パチパチと薪がはぜる音が心地よく、ゆらゆらと揺れる炎に思わず見惚れてしまいます。この薪サウナ、私たちが普段よくみる電気ストーブ式に比べて「熱がやわらかい」んだそう。

「湿度が高いので、ゆっくりと体の芯まで温めることができるんですよ」と教えてくれたのは、オーナーの若林優貴さん。もともと大のサウナ好きだった若林さんは、全国各地のサウナを巡り、「理想のサウナ」を目指して勉強してきたと言います。サウナスパ健康アドバイザー、サウナ・スパ・プロフェッショナルなど数々の資格を取得後、究極のサウナを築く場所を求めてたどり着いたのが、ここ前橋市でした。

出身地でもない前橋になぜお店をオープンしたのか聞いてみると、「群馬は、魅力的な温泉が多くある一方でが、実はサウナの専門施設が少ないんですよ」とのこと。前橋市民が、「毎日サウナに通えるように」という思いでつくられたのが、この毎日サウナだったのでした。

そんなプロがつくる空間は、サウナ好きからすればもはや極楽浄土。
「ゆったりと座れるように」との思いから広めにつくられたベンチ、温度の違う2つの水風呂、リラックス効果のある緑色をふんだんに使った外気浴コーナー。さらに、ロウリュ*に使うアロマ水は、日替わりで20種類以上も用意されているのだそうです。

*高温のサウナストーンに水をかけ、室内に蒸気を発生させる行為

そして、毎日サウナの1番の魅力と言っても過言ではないのが、若林さん自ら行うアウフグース*。サウナ好きにはたまらないパフォーマンスですが、こちらのアウフグースはただタオルであおぐだけでは終わりません。
*ロウリュで発生した蒸気をタオルであおぎ、全身に熱波を浴びせてくれるパフォーマンス

座っているだけでも暑い高温の室内で、BGMにあわせてアクロバティックにタオルを振りまわすという本格的なパフォーマンス。あまりの熱狂に、終了後はサウナ室内で拍手喝采が湧き起こるのだとか。サウナ室の前には順番待ちの列ができることも多く、わざわざ東京から来られるお客さんも多いと言います。

「ただ熱波を浴びるのではなく、エンターテインメントとして楽しんでもらいたい」という思いから、日々新たな技の習得に励んでいるという若林さん。全国各地のサウナからゲストに呼ばれ、出張アウフグースに行くことも多いのだそうです。

サウナ室の温度に負けないほどサウナ熱の高い店主がつくる、究極のサウナ。毎日通えば心身ともに「ととのう」こと間違いなしです。

【毎日サウナ】
群馬県前橋市荒牧町2丁目33-5
TEL:0278-88-6616
営業時間:平日 15:00〜24:00  土日祝 12:00~24:00
定休日:月曜日(祝日除く)
※男性専用施設、第2第4月曜日はレディースデイ

やさしい工夫を練り込んで。毎日をあたためるおいしいパン

風光明媚な敷島エリアを巡るツアー、最後にわたしたちが訪れたのは茶色い斜め屋根の建物「JINS PARK」内にある、JINSが運営するベーカリーカフェ「エブリパン前橋」です。

JINS PARKの設計は建築家・永山祐子さん。

「みんなが愛する味を、いつもできたてでお届けしたい」という想いを込め名付けられた「エブリパン(EVERYPAN)」。店内には、もっちりしっとり食感がやみつきになる「湯種食パン」。具材がゴロゴロと入った「カレーぱん」。小麦の豊かな香りで食事を華やかにしてくれる「バゲッド」など、日常のどんなシーンにも寄り添う出来立てパンたちが50種ほど並んでいて、どれもたまらなくおいしそう……。

ラインアップはシーズンごとに変わります。

ディスプレイの前を行ったり来たりしてしまいます。どうしたものかと迷っていたら、店長の武さんがやさしく声をかけてくれました。

「不動の一番人気、『塩バターパン(ハニーバター)』なんてどうですか?」

ひと口かじると、ほどよい塩気にほんのりはちみつの風味。絶妙な甘じょっぱさがたまりません。パンの上にまぶされた岩塩のカリカリ食感のアクセントも心地よく、人気の理由にもうなずけます! 夢中で食べ進めていると店長の武さんが実は……と、塩パンに練り込まれたおいしさだけではないひみつを教えてくれました。

「生地に胚芽を配合しているんです。胚芽にはビタミンEやビタミンBをはじめ食物繊維やミネラルなどが含まれており、通常の小麦粉に比べて栄養価が高いことが特徴です」

毎日食べたいパンだからこそのうれしいひと工夫。こんなふうにエブリパンのパンにはお客さんのことを想った、やさしいこだわりがたくさんつまっています。たとえば、惣菜パンで1番人気のカレーぱんにはこんな工夫がありました。

「お子様でも食べやすいようルウは甘口に仕上げつつ、スパイスをふんだんに使って大人の方にも満足いただける深みを出しています。また具材の豚肉は地元、群馬県産のものにこだわりました。そしてなにより、冷めてもおいしいところがポイントです◎」

店名ロゴもかわいくて、ついつい写真を撮りたくなります!

豊富なドリンクメニューもエブリパンの魅力のひとつです。バリスタが丁寧に淹れるコーヒーやラテはもちろん、レモネードやフルーツソーダなどカフェインレスのな飲み物も充実。メニューはすべてイートイン可能で、開放感たっぷりの店内でいただくのもよし。風の穏やかな季節には、屋外のテラス席でやわらかな陽とともにパンをたのしむのもよし。どちらもきっと心地いい時間になるでしょう。

店内に併設されたJINSでは、もちろん眼鏡を買うこともできます。待ち時間にゆったりお茶をするのもいいですね。

ひっきりなしに訪れるお客さんたちがわくわくとたのしそうにパンを買っている姿を見ていると、地域の方々からとても愛されているのだとうれしい気持ちになりました。JINS PARK敷地を活用したマルシェなど、地元の人たちが交流できるイベントも大好評。今後についても計画中です。

塩バターパン(ハニーバター)¥100・カレーぱん ¥220

【エブリパン前橋】
群馬県前橋市川原町1-21-9 JINS PARK内
TEL:027-226-1870
営業時間:平日 10:00〜18:00 土日祝 9:00〜18:00(LO 17:00)
定休日:元日


敷島公園エリアのおでかけはいかがでしたか?
目にやさしい緑を感じながら、アートやサウナも楽しめるエリア。お散歩だけにとどまらない、いろんな楽しみかたができるのも、敷島公園周辺ならではのポイントです。

次回はいよいよ前橋編の最終回! 
前橋が誇る名峰、赤城山エリアのドライブコースをご紹介します。ぜひお楽しみに!