JINSの創業の地である前橋は、市内を南北にはしる利根川の水源を活かし、さまざまな農業が盛んにおこなわれています。そんな豊富な食材たちに恵まれたこの街では、たくさんのグルメが芽吹いており、地図アプリで『レストラン』と検索するだけでも、そのジャンル・雰囲気の多様さに圧倒されてしまいます。
今回は前橋にゆかりあるJINSスタッフのコメントなども参考に、気になったお店へ編集部が足を運んでみました。
おいしいだけでなく、たのしい、そしてなにやら不思議な?・・・・・・まで、胃袋も心も温まったグルメツアーの模様をお届けします。
毎日、食べたいやさしい町中華。地元のクリエイターにも愛される味
最初に訪れたのは、前橋駅から東に2キロほど、住宅街のあいだに位置する「喜久屋食堂」さん。
お客さんの90%がオーダーするという「豚糸®炒飯(ルースーチャーハン)」と、先代から50年味を変えていないという「ギョーザ」を注文することにしました。

卵とねぎのやさしい炒飯に、細切り豚肉と筍の醤油餡がたっぷりと。豚の旨味をまとった筍のシャクシャク食感がたのしく、シンプルな素材ながらも炒飯と餡の絶妙バランスに、もうレンゲが止まりません! ただ気になるのは、メニュー名の「豚糸」と「炒飯」のあいだにある商標登録マーク「®」の存在。そこで店長・浅香さんにお話をうかがうと、意外な答えがかえってきました。

浅香さんが中華料理屋で修行をはじめたのは25歳の頃。それまでは約10年にわたり、アパレルショップの店員として青春を注いでいたと言います。
「ジーンズブランドの『LEVI’S®』にずっと憧れていて。いつか自分も付加価値のあるものを生み出して、®マークをつけるって決めたんだよね」

そうして生まれた、豚糸®炒飯。この「豚糸」という言葉も実は浅香さんのオリジナル! 前橋で盛んな養豚・生糸産業にちなんで名付けられたそうです。
さらにこちらの「喜久屋食堂」は、地元のクリエイターたちが集うお店でもあります。北欧のヴィンテージ家具で揃えられた雰囲気のある内装は、この味に惹かれたデザイナーによるもの。

浅香さんの熱いおはなしをもっと聞きたかったなと後ろ髪を引かれながら、地元に愛されるお店をあとにするのでした。

「餃子のたねはあんまり練らないってのが業界のセオリーだけどうちはその逆。先代が和菓子屋だったから、あんこをつくるようにしっかり練っているんだ。だからほかでは味わえないギョーザでしょ」。
豚糸®炒飯 大 ¥880・ギョーザ ¥440(※写真は2人前の量になります)
【喜久屋食堂】
群馬県前橋市文京町3-21-18
TEL:027-221-2996
営業時間:10:00〜15:00・17:00〜20:00
定休日:月・火(月曜が祝日の場合は営業)
無色をあなどることなかれ。深いコクの透明ラーメン
まだまだお腹に余力を残した編集部が向かった先は、【昼だけラーメン 夜は居酒屋】と謳う「ANDRE KANDRE」さん。
「透明醤油らーめん」。名前のインパクトに惹かれ、さっそく注文! 目の前に現れたどんぶりのなかを見て、なんとびっくり! 底まで見えるほどにスープが透き通っているのです。レンゲを口に運んで、さらに驚く。その透明度からは想像できないほど香り豊かで、幾重にも折り重なったうまみ……。思わず唸るおいしさです。

トッピングやご飯物も豊富。自分だけのお気に入りの組み合わせを見つけてみるのもいいかもしれません。
なんだろう?このコクの正体は……そう思いながらスープと相性のいい細麺をつるつると堪能していきます。そして気づけば、どんぶりは空っぽに。しかしスープの謎はわからないので、店長・藤澤さんに教えてください!とお願いしてみました。
「群馬県産『赤城どり』のガラをベースに、挽き肉と国産の豚のゲンコツでスープをとっています!」
たくさんの具材が入っているから複雑で豊かなスープになっているわけなんですね。一見なにもないように錯覚するほどの透明感に、繊細で丁寧な仕事がつまっていました。

そもそも、どうして居酒屋でラーメンの提供をはじめられたのでしょうか? こちらの理由も教えてもらうことにしました。
「緊急事態宣言下の時短営業で、お客さんが居酒屋で飲んだあとにシメを求めて二軒目に行くってことができなくなっちゃったんですよ。だから、うちでシメもつくればそんなお客さんたちに喜んでもらえるんじゃないか、というのがきっかけですね」
そして、そのおいしさがゆえ、ラーメンだけを食べにくるお客さんが急増。ランチ営業をするまでに至ったのだと言います。
当初は「透明醤油らーめん」と「たまり醤油らーめん」の2種類を提供していたそうですが、最近新たに加わったのが、両方のいいところを合わせた「あいだ」というメニュー。
「『どちらも美味しいから悩むのがめんどくさい』という常連さんの声があって、それで『あいだ』をつくったんです。」
どこまでもお客さん想い。そんな藤澤さんのあたたかな人柄もこの一杯にあらわれている気がしました。

透明醤油らーめん ¥900
【ANDRE KANDRE】
群馬県前橋市住吉町2-8-14 住吉ビル1F
TEL:027-215-7080
営業時間:11:00~スープ切れまで 18:00~22:00(現在ラーメンの提供は昼のみ)
定休日:日・月
店主とのおしゃべりで心も元気になれる、レトロでかわいいオアシス
いまにも降り出しそうな空を避けるように、潜り込んだ中央通り商店街のアーケード。店頭のかわいいショーケースが目印のこちらは『パーラーレストラン モモヤ』さんです。『パーラーレストラン』という店名にもあるように、オムライスやラーメン、定食にパフェ、さらにあんみつと。メニューには食事とデザートがずらりと並んでいます。

わぁ……どうしよう。決めきれなくて、店主である日詰さんにひとまず話を聞いてみることにしました。
このジャンルレスで豊富なラインナップは、初代店主のおじいさんが「モモヤ食堂」としてお店をはじめたことに起因します。その後、ご両親の代になってお父さんが修行された洋食と、お母さんの得意だったデザートが加わり、メニューはどんどん増えていきました。日詰さんが3代目を継ぐにあたって、これでも結構減らした方だと言います。

パティシエをされていたという日詰さんのおすすめは、デザートのメニュー。それを聞いて「プリン・ア・ラ・モード」を注文しました。
「あっ……! フルーツがたりない!」
そう言って、慌てて店を出て行く日詰さん。
「お待たせ!」
元気な声に顔を向けると、小脇にスイカを抱えた日詰さんが……。そんなおちゃめな姿には思わず笑ってしまいました。どうやらお隣の八百屋さんに買いにいってくれたと言うのです。そんなほっこりエピソードと遭遇できるのも商店街の魅力なのかもしれません。

硬めのほろ苦プリンと、少し甘めのホイップクリームの相性ばつぐん!
口いっぱいに広がる幸せを満喫していると、あちこちから明るい声が湧いていることに気がつきました。お客さんみんなに声をかけ、楽しくおしゃべりされる日詰さん。おいしい料理はもちろんだけど、いつも笑ってくれる日詰さんとの会話を楽しみに、みんなここに来ているのかも。モモヤはきっと前橋、憩いのオアシスなのでしょう。

プリン・ア・ラ・モード ¥550
【パーラーレストラン モモヤ】
群馬県前橋市千代田町2-12-2
TEL:027-231-5017
営業時間:10:00〜19:00(L.O18:30)
休:水・第3水曜の翌木曜
青い光に照らされて、摩訶不思議なすき焼き体験
「とにかく店内がすごいんです!」という推薦コメントに期待を抱き、ドアを開けると想像を超えた世界が広がっていました。低照度の青いライトに照らされた空間。天井や壁にも所狭しと照明やオブジェ、絵画でびっしり覆われています。この不思議な内装はすべて、店主・三村さんのDIYによるもの。

現在、アーケードに面する1階のお部屋を増築中。「つくりながら考えていく」という完成形が楽しみです。
こんな異世界で出てくるすき焼きとは、一体どんなものなんだろうか……。少しビクビクしながら待っていると用意されたのは、お豆腐に椎茸、しらたきそしてうどんという、オーソドックスなすき焼きセット。食べてみると、“ふつう”においしいすき焼きです。

お肉は豚肉と牛肉のあい盛り。両方を味わえるなんて、ちょっと得した気分。
「すき焼きが好きではじめたけど、毎日つくっているとちょっとイヤになってきちゃった。」
「こだわりはない! こだわりを持つとくたびれちゃうからね。」
そんなことも正直に教えてくれるチャーミングな三村さんとおはなしをしながら、妖艶な空間ですき焼きをつつくということ。前橋随一の非日常なこの体験こそ、最後の50セントの醍醐味なのです。

摩訶不思議な店名も内装も、「理由ですか……? う〜ん特にないですね」。謎は謎のままの方がいいのかもしれない。それもまたひとつの趣です。
すき焼き(2人前)¥3,500
【牛鍋酒家 最後の50セント】
群馬県前橋市千代田町4-12-7 MRビル2F
TEL:027-235-0250
営業時間:18:00〜22:00
休:日・月・火
前橋グルメツアーはいかがでしたでしょうか?
胃袋も心も大満足だった今回。読者のみなさまも、ぜひ前橋にきていただいて、おいしいだけじゃない!個性豊かな食の魅力を体験してもらえたらうれしいです。
次回の『とうだいマップ』では、前橋・敷島エリアのおすすめ情報をお届けする予定、どうぞお楽しみに!