1つ目:映画『GENERAL MAGIC』

タイトル:『GENERAL MAGIC』
監督:サラ・ケルーシュ、マット・モード
カテゴリ:映画
公開年:2018年
Picked by:宮武徹郎

1990年にAppleからスピンアウトした会社、GENERAL MAGIC。もともとMacintoshをつくっていたメンバーが立ち上げた伝説的なこの企業の挑戦は、現在のインターネットやスマートフォンにつながるアイデアを持ち合わせ、才能のあるメンバーが集まっていたにもかかわらず失敗に終わってしまいます。そんな彼らの歴史をまとめた映画が『GENERAL MAGIC』です。

この映画からは、現在普及しているアイデアや技術の中には、ずっと昔から存在していたものもあること、そしてそのアイデアが芽を出し花開くためには、何よりもタイミングが重要だということがわかるはず。みなさんの手元にあるスマートフォンやインターネットの技術がどのように生まれて、なぜ成功するにいたったかを想像しながら観るとより楽しめるはずです。

2つ目:書籍『パクリ経済』

タイトル:『パクリ経済』
著者:カル・ラウスティアラ、クリストファー・スプリグマン
カテゴリ:書籍
出版年:2015年
Picked by:草野美木

インターネットのいいところは、いいアイデアがどんどん拡散されていくこと。みなさんも、この特性によって人気になった人やコンテンツを思い浮かべることができるはずです。この本からは、いいものをコピーし合いながらそのジャンルが盛り上がっていくことの面白さを学ぶことができます。

誰かが作ったものをコピーすることにマイナスなイメージを持っている人は少なくないでしょう。しかし、それによって創造性が失われてしまうかと言うと、必ずしもそうではありません。例えばレシピやファッションでは、誰でもコピーすることができるけれど絶えずイノベーションが生まれています。悪意のあるコピーも存在するけれど、コピーすることはイノベーションと共存できる、むしろ模倣により創造性が刺激されることもあるのだとこの本は教えてくれます。

今話題の生成AIは、すでにある情報やコンテンツをインプットすることで精度を上げていくものです。それがよくないという風潮がありますが、もう少し違った見方もできるはず。そのヒントがこの本には詰まっています。インターネットのオープンさや、掛け合わせにより生まれるものの可能性を感じてみてください。

3.映画『エクス・マキナ』

タイトル:『エクス・マキナ』
監督:アレックス・ガーランド
カテゴリ:映画
出版年:2015年
Picked by:宮武徹郎

人間の姿を持った人工知能と、それに出会ったプログラマーの心理戦を描いたこの作品の主題は、AIが意識を持っているかどうか。作品を通して「そもそも意識とは何か」という問いを私たちに投げかけます。AIが一般的に使われ始めた今の時代にフィットする一本です。

話題のChatGPTと会話をしたことがある方の中には、AIを「人間っぽいな」と感じたことがある方もいるでしょう。『エクス・マキナ』に登場するAIは人型ロボットという違いはあるものの、人間らしさを感じさせるところがChatGPTに少し似ています。

みなさんがどんな感想を持ってくださるかが楽しみなのが、この映画のエンディングです。バッドエンドだと捉える人もいる一方で、監督の意図はそうではないそう。「意識とは」という問いに用意された結末を楽しみに観てください。

4. 書籍『eボーイズ: ベンチャーキャピタル成功物語』

タイトル:『eボーイズ: ベンチャーキャピタル成功物語』
著者:ランダル・E. ストロス
カテゴリ:書籍
出版年:2001年
Picked by:草野美木

ベンチャーキャピタルという存在をご存知ですか? 起業家を最初に信じ、そのアイデアに投資し、黒子として伴走する応援団のような存在がベンチャーキャピタリストです。この本には、eBay、Uberなどを生んだインターネット起業家たちを支えた、ベンチャーキャピタリストの成功にいたるストーリーが描かれています。

私がベンチャーキャピタルで働き始めた時に買ったのがこの本です。インターネット業界の起業ストーリーでは決まって起業家にスポットライトがあたりますが、そのそばにはそれを支え、時に叱咤激励しながら見守ってきた人たちがいることを教えてくれる一冊です。

みなさんが普段使っているインターネットサービス。その背景に思いを馳せる機会はあまりないかもしれません。それらがどうやって生まれてきたかを想像し、その苦労や成功までの道のりを一緒に辿れるのがこの本の面白いところ。サクセスストーリーを読んではたらくことの楽しさを味わいたい方にもおすすめです。

5.ポッドキャスト『#129 インスタの短尺動画機能に隠されたメタの焦り、ソーシャルメディアの時代は終わったのか?』

タイトル:『OffTopic//オフトピック』#129
制作者:OffTopic
カテゴリ:Podcast
配信年:2022年
Picked by:宮武徹郎・草野美木

最後にご紹介するのは、私たちのPodcastから、ソーシャルメディアの変容についてお話ししたエピソードです。Instagramを見ていて、見ているコンテンツが変わってきたと感じたことはありませんか? これまでは友達の投稿が多く表示されていたのが、だんだんとフォローしていない人の動画が出ていることに気づいた方、それがこのエピソードのテーマです。

情報のエンターテイメントはゴシップ雑誌から始まり、友だちの近況を面白がる旧来のSNSを経て、今やプロの“友だち”(インフルエンサー)が発信するコンテンツプラットフォームへと変化してきました。それがさらに進化を遂げ、全世界からプロの“友だち”をレコメンドしてくれるようになった「レコメンデーションメディア」の代表格がTikTokです。そしてInstagramは、それを意識した機能を次々にリリースしています。

もしかしたら「友だちの情報以外、いらないのに」と感じている方も少なくないかもしれません。しかし、そう思っているにも関わらず、ついつい見てしまうのも事実。そんな大きな流れの変化が起きていることにに気付いていただけたら嬉しいなと思います。Off TopicのPodcastは、誰もが触れているカルチャーを切り口に、テクノロジーについてお話しするのが特徴。例えば「スターバックスが意外とテックに強い」なんていう話題も。この記事を見て興味を持ってくださった方はぜひ聞きにきてくださいね。

Podcast番組『Off Topic//オフトピック』はこちら

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宮武:私たちが選んだコンテンツの中で、何か気になるものがあればうれしいなと思います。未知のテクノロジーは怖いものだと思われがちです。けれど、今までの人類の歴史を振り返ると、新しいテクノロジーはいつも、最終的にはわたしたちをいい方向に向けてくれていると言っていいのではないでしょうか。インターネットやそこから生まれたテクノロジーをどう使うかは私たち次第。これらのコンテンツでインターネットの流れや考え方に触れて、好きになってもらえたら嬉しいです。

草野:現代では、全てのものがインターネットに何かしら関係しています。そういう意味では、インターネットについて知ることは、自分が好きなものや、関わるものについて知ることでもあります。それに、インターネットはあなた自身が利用できるツール。インターネットをうまく利用すれば、TikTokなどSNSのローカルとグローバルのトレンドが似てきている中で、日本からの発信が世界的に人気になるチャンスもある。さらに加速するインターネットの面白さを感じていただけたらうれしいなと思います。

【プロフィール】
Off Topic 宮武徹郎・草野美木
Podcaster
2018年より海外の最新テック・カルチャー情報を伝えるポッドキャスト番組『Off Topic』を配信し、Apple Podcast、Spotifyはじめ、並み居るチャートのテクノロジー部門で1位を獲得。リスナーから強い支持を集めている。