しんのすけ どうもこんにちは! ふだんはTikTokで映画の紹介をしてます。しんのすけです。今回は、グッときて背中を押してくれる作品をガイドしていきます、よろしくお願いします!

1本目:クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園

クレヨンしんちゃんの劇場版はどれも評価が高いですが、これは相当やばい傑作です。

しんのすけや風間くんたち幼稚園児が、全寮制の超エリート校「私立天下統一カスカベ学園」通称・天カス学園に1週間体験入学することに。学園で多発する怪事件に巻き込まれ、しんのすけ達は「カスカベ探偵倶楽部」を結成し、謎解きをしていきます。

この天カス学園は、AIによって生徒がランク付けされているのが特徴です。AI が生徒のあいだにヒエラルキーをつくり、体制をつくっている。その環境に「野原しんのすけ」という、圧倒的に自由な存在が入ることで、強固な体制が破壊されていくんです。数値では絶対に測れないパワーで、AIに立ち向かっていく。
そうした物語の展開が、常人では考えられない表現で描かれていて、青春ミステリーとして見どころ満載です。

自由とはなにか。自分らしく突き抜けた選択をするしんちゃんの姿は、大人が見ても感動します。

2本目:エド・ウッド

2本目は「史上最低の映画監督」と言われた映画監督エド・ウッドを題材にしたモノクロ映画です。エドの半生をジョニー・デップ主演で描いています。

1950年代のハリウッド。映画監督を目指すエド青年は何本も映画を撮るのですが、とにかく絶望的に才能がないんです。映画愛がとても強くて、映画制作に人生をかけてひたむきに向き合ってるんですけど、どの作品もまったく、おもしろくない。

どうして「史上最低の映画監督」とまで言われる人が映画の題材になったのか。

じつはエドは酒に溺れて亡くなったのち、カルト的な人気を得て、ある意味評価されるようになります。この映画を撮ったティム・バートン監督をはじめ、著名な作家たちがエドを支持する。作品はおもしろくないんですが、「彼の異常な情熱を、作家はみな見習うべきだ」と。自己ベストを目指して映画をつくり続けた結果、死後に評価を受けるんです。

ぼくは高校生のころにはじめて『エド・ウッド』を観たんですが、そのときにはおもしろさが全然わかりませんでした。ティム・バートンはどうしてわざわざこの映画をつくったんだろう、と思ったくらいです。でも、大学生のときに自分で映画制作を経験したあとに再び観たら、もう大号泣でした。一体どこからエドの強烈なバイタリティが生まれるのか、胸が熱くなります。この作品は大人になり年齢を重ねるほど、刺さる作品なのかもしれません。

3本目:桐島、部活やめるってよ

この映画は、「自己ベストを目指す高校生の群像劇」と言えるのではないでしょうか。

田舎町の県立高校が舞台です。バレー部のキャプテンを務める桐島が突然部活を辞めたことをきっかけに、部活やクラスの人間関係に徐々に歪みが広がり、校内のヒエラルキーが崩壊していく……。メインキャストそれぞれの視点でエピソードが描かれています。

東出昌大さん演じる宏樹は、高身長のイケメンでヒエラルキー高めですが、なんでもこなせるからこそ、他人と自分を比べてしまいます。同級生がみんなそれぞれ映画制作やバレー、遊ぶことなどに振り切っているなかで、宏樹は自分だけが秀でたものを持っていないように感じてしまう。でも、今までのヒエラルキーでは交わらなかった人たちと接点ができることによって「意外とみんな悩んでるんだ」と気付いていきます。周りの影響を受けて、宏樹も成長していく。

キャストが豪華で、現在も活躍している俳優さんが多数出演しているのもポイント。もはやお祭りと言ってもいいレベルです。

4本目:メタモルフォーゼの縁側

芦田愛菜さん演じる女子高生うららは BL(ボーイズ・ラブ)が好き。そのことをひた隠しにして暮らしていますが、偶然、同じくBL好きのおばあちゃん・雪と仲良くなり、「BLが好き」と言い合える喜びをかみしめます。BL作家になることを躊躇するうららですが、雪に「上手い下手なんてどうでもいい、あなたが描く漫画を私が見たいから、描いて」と言われ一念発起。作家活動を開始します。
うららが自分の「好き」によって人生が動かされていくさまが、ささやかなできごとを通して描かれている、とてもさわやかな映画です。大きな事件がひとつも起こらない点も、素敵なんですよね。

いまの時代、ぼくもそうですが、何か発信する人はみんな、「売れたい」とか「バズらせよう」と意識してしまいます。でも、ものづくりの原点には「目の前の人を楽しませたい」という思いがあるはずです。この映画にはそんなエンターテインメントの根源が詰まっています。

「つくった作品が技術的に上手じゃなくても、伝わる人にはちゃんと伝わるよ」ということが2時間かけて描かれている、すごく幸せな映画です。

5本目:フォレスト・ガンプ/一期一会

最後は、ベタなんですけどやっぱり『フォレストガンプ/一期一会』ですかね。まさに自己ベストを目指す作品の定番ではないでしょうか。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の監督であるロバート・ゼメキスの作品です。

トム・ハンクス演じる主人公のフォレスト・ガンプは、他人より知能指数が低いというハンデを背負っています。ですが、周囲のやさしさもあり、人と比べることなく成長して成功を収める。自分がやりたいこと、やったほうがいいと思うことは、誰の意見も聞かずに突き進んでいく。その姿が、いろんな人たちの目標になっていくんです。

一番印象的なのは、マラソンのシーン。何往復もアメリカ横断を繰り返すフォレストの姿を見て、人びとがあとを追うように走りはじめます。ずっとひとりで走っていたのに、気づけば先頭に立っている。いつのまにかみんなの目標になる姿が、「自己ベストこそ、道しるべ。」という言葉に重なります。

そして、ファンが多いこの作品自体も、「こんなふうに生きたい」と思わせてくれる、多くの人にとっての道しるべになっていると思います。

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以上、ぼくが選んだ5作品です! どの作品の登場人物も、他人と比べることなく人生を歩んでいます。自分の価値観だけを基準に生きることはときに勇気が要りますが、人生に迷ったとき、今回セレクトした作品を観ると「“自己ベスト”こそ、道しるべ。」と前向きになれるはず。どれも自信を持っておすすめできる映画です!

【プロフィール】
しんのすけ
齊藤進之介。1988年、京都府生まれ。映画感想TikTokクリエイター。映像作家、専門学校講師。現在はドラマ・映画の監督業を始め、ジョニー・デップ、トム・ホランドらハリウッド俳優へのインタビューも行う。著書に『シネマ・ライフハック 人生の悩みに50の映画で答えてみた』がある。