「自分らしさ」を道しるべに
——特集テーマの「“自己ベスト”こそ、道しるべ。」についてお聞きしたいと思います。長くご活躍の峯岸さんですが、近頃は一層注目を集めることも多く、どのお仕事も反響を得て、パワーアップを繰り返されているように感じます。いまのご活躍や世間の反応ついて、ご自身ではどう考えられていますか?
結婚発表のTwitterのリアクションでも感じたんですけど、“世間の人気者って、こんなふうに褒められたり、祝福されたりして生きているのかな”って(笑)。ちょっと、誰かの人生を疑似体験をしているような感覚なんです。
——話題の中心にあっても、どこか客観的な視点を持たれているんですね。
もちろんいただく反響はうれしいのですが、最近はどこか夢見心地……というのが正直なところなんですよ。特に『女子メンタル』の出演以降、ありがたいことにみなさんに好意的なリアクションをいただけることが多くなったように感じています。こんなに毎日順調で穏やかにいられたことが、これまでの人生になかったので、「これは誰の人生なんだろう」と。
私は根がとてもネガティブ。喜びと同時に、「またいつダメになるかわからない」「ダメになったらどうしよう」と常に自戒と不安の気持ちでいっぱいだったりします。そうならないよう、努力しないといけないですね。

——アイドル時代の枠にとどまらず活躍の場を広げてらっしゃいます。自分自身を向上・更新し続けるために意識していることはありますか?
20代はとにかくやらせてもらえることは何でもやろう! と体当たりしてきました。どんなお仕事も何に繋がるかわからないですもんね。私自身、センスや技術がある器用なタイプではないということをよくわかってるんです。なので、たとえば出演させてもらう番組は過去の回を見て流れを掴んだり、話すエピソードの準備をしたり……最低限やれることはやってから挑んできたように思います。
それについて、「一生懸命」と評価をもらうこともあるんですが、きっと一生懸命やるだけなら、誰でもできることだと思うんですよ。だから、その先で私にしかない価値が欲しい! とずっともがいてきたんです。それがようやく少しずつですが実を結びはじめて、30代を目前にしたいまは、もう少し肩の力を抜いて楽な気持ちで「自分らしさ」も大切にできるようになってきた気がしますね。
——その心持ちが、いまの峯岸さんにフィットしているのかもしれませんね。
そうだとうれしいです。デビュー当時から、とにかく私は周りの声をすごく気にするタイプ。それはいまも変わらず、SNSのエゴサーチもせずにはいられないんです(笑)。
だけどそれもいいのかな、と最近は思い始めています。たとえばミュージックビデオや先日発売したスタイルブック、それに結婚報告の写真にしたって、やっぱり人に届けるために作ったものなので。受け取ってくれる人がいて成立するものですから、どんなふうに受け取ってもらえたか、喜んでもらえたか、気分を害している人はいないか……できうる限り確かめて、次の機会の参考にさせてもらいたいと思うんですよ。

自己ベストじゃないなら、もったいない。
——たくさんの声があるなかで、それを真摯に一つひとつ受け止めるとなると、ときに辛くなってしまうこともあったのではないでしょうか?
そうですね。特にアイドル時代は常に周りと比べられる環境にあったので、評価されないことや、誰にも気づいてもらえないことにフラストレーションを抱えたり、悩んだり、 落ち込んだり、その繰り返しでした。ずっと人の目を気にして、他人と比べて好かれたい、よく思われたい……そういう気持ちにとらわれて、身動きが取れなくなってしまったこともあります。
冷静に受け止めて、次の機会に活かそうと思えるようになったのは、つい最近のことなんです。もちろんまだまだ落ち込んでしまうこともあるんですけどね。
——ネガティブな気持ちと常に闘いながら、それでも続けることができたのはどうしてでしょう?
「辞めることができたら、どんなに楽だろう」ということは、ことあるごとに考えていた気がしますね。だけどやっぱり、応援してくださってる方の存在もありますし、「これ以上はない」「これが頂点だ」と思うことができる瞬間をまだ経験していない、まだ自己ベストを更新しきれていない、ということが大きかったと思います。
途中、何度もピンチも迎えましたが、それでも徐々に良い景色が見え始めて、少しずつ楽しいことが増えて、ようやく自分のやりたいことができるようになって……と階段を上ってきたような感覚なんです。「貧乏性」なのかもしれませんが、ここで降りるのはもったいないんじゃないか! という気持ちがすべてで(笑)。まだ上ることができるのであれば、もうちょっと見てみたいな、という想いでここまでやってきました。

年齢、経験……掴み始めた自分のペース
——階段を上るなかで、心持ちや取り組み方が少しずつ変わり始めたのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか?
ひとつは、年齢や経験があると思います。昨年AKB48も卒業し、もうすぐ30代に突入するということもあって、自分自身のこだわりも多少は持っていたいと思うようになりました。最近は「やりたくない」と思うことも少しずつ伝えられるようになってきたんです。
私が「やりたくない」と感じるのは、冗談でも誰かを貶したり落としたりするようなこと。それはお断りするようにしています。
それから、ゴールが決まっていて「峯岸さんにはこれだけやってもらえればOKです」と言われるようなお仕事は、なるべく「こうするのはどうですか?」と意見を出させていただくようになりました。やっぱり、自分で考えたり工夫する余地のあるお仕事にやりがいを感じるので。
そういった意味では、いま「書く仕事」もすごく楽しいんです。
——コラムの執筆やスタイルブックの発刊など、「文章を通した発信」も多くなっていますよね。
そうですね。演者としてのお仕事は、期待に応えたいという気持ちが強すぎて、どうしても空回りしてしまうことがあるので(笑)。だけど、書くお仕事はじっくりと向き合って気持ちを整理しながら考えることができるので、伝えたいことをきちんと伝えられる気がします。「書く」というお仕事に出会えたことも転機でした。これからも続けていけたら、と思っています。
——30代に向けて、峯岸さん自身が心地いいと感じる環境やスピード感を掴み始めているのかもしれませんね。
それはありますね。プライベートでは結婚をしたことも、大きな変化のきっかけになりました。いつも味方でいてくれる人ができたことで、人から好かれたい、良く思われたい、みたいなことを過度に思う必要がなくなったことが、本当に私を楽にさせてくれたんです。人と比べて、必要以上に気張ったり焦らなくていいと思えて。いまは、自分のペースで自分らしく頑張ろうという気持ちですね。

「頼りにできる人がいること」も誇りに
——幅広くたくさんのことに挑戦されている峯岸さんですが、お仕事についてどなたかに相談することはありますか?
グループで一緒に活動していた、小嶋陽菜とさっしー(指原莉乃)にはいつも意見をもらってますね。絶大な信頼を寄せている二人で、なんでも相談しちゃいます(笑)。
陽菜は「Aを選べばこうなるし、Bを選べばこうなるよ。みぃちゃん(峯岸)が、どうしたいかだね」と、わかりやすくほどいて選択肢をくれる感じ。さっしーは、バラエティ番組に関する相談をさせてもらうことが多くて、実体験を踏まえたアドバイスをくれるので、すごく参考にさせてもらっています。
それから、リリー・フランキーさんもよく相談させていただく大先輩です。とても正直に言ってくださるので、「厳しい!」と感じることもあるんですが、そのぶん褒めてもらえるとすごくうれしいんですよ。そのリリーさんが「書くことは続けた方がいいよ」とアドバイスをくださって、励みになりましたね。「原稿見るから、全部送ってよ」とまで言ってくださるんです。本当はアドバイスいただきたいんですけど、私が〆切ぎりぎりまで時間をかけて書いてしまい、提出期限に間に合わなくなるため公開してから送ってしまうのですが……(笑)。
——「放っておけない」「応援したくなる」というのもまた、峯岸さんの魅力のひとつなんでしょうね。
以前は、みんなに甘えていていいんだろうか、いつまでも相談して物事を決めていていいんだろうか……という気持ちもあったんですが、こんなに才能に富んだ味方に恵まれているというのも、私が続けてきた結果で、かけがえない財産だなと思えるようになりました。最近はたまにみんなの知らないところで作って完成させたものを披露したりして、「すごいね」「よく頑張ったね」って言われるのもめちゃくちゃうれしいですね。そういうことも少しずつですが、できるようになってきました(笑)。
リリーさんを見ていて憧れるのは、作家であり、俳優であり、イラストレーターであり……そんな肩書きを飛び越えて、「リリー・フランキーの仕事だから見てみたい」とリリーさん自身がひとつのブランドになっているじゃないですか。すごくすごく遠い未来かもしれませんが、そんな存在になれるように努力したいなと思うようになってきたんです。
——肩書きを飛び越えた存在に。
そうですね。と言うのも、先日、アイドルのフェスに親善大使として参加させてもらったんです。そこには、 200組ぐらいのアイドルの子たちがいて、こんなにたくさんいるんだ……と驚きました。それと同時に彼女たちにとって、私の活動や活躍が「こんな選択肢もあるんだ」「こんな道にも進めるんだ」と思えるようなひとつの道しるべになれればうれしいなと、すごくおこがましいながら思ったんですよ。
私が更新していく自己ベストが、他の誰かにとっても道しるべになれば、こんな幸せなことはないですね。

みんなの肩の荷を下ろしてあげたい
——自分らしさを大切に邁進していくことが、自分にとっても誰かにとっても道しるべになる、というのは素敵なことですね。これから編集長として「JINS PARK」の特集をどんな場所にしたいと考えていますか?
周りの誰かと比べるんじゃなく、自分と向き合って自分らしくベストを更新していく。そういうマインドになれるときっと楽になれるけど、なかなか簡単なことではないと思うんですよね。私自身もそうありたいと願って、少しずつ変わり始めていますが、まだまだ他人と比べてしまうことはいっぱいあります。
ですから、自分らしく「自己ベスト」を更新し続けている方々の、仕事との向き合い方や人生の捉え方に触れることで、私自身も成長するためのヒントをたくさんいただきたいと思っています。そして読んでくださる方にも「いまより少し楽に、楽しく生きる方法」をお伝えして、肩の荷をちょっと下ろしてあげることができたらうれしいです。
私は「いいな」と思ったものを取り入れるのは得意な方……つまり、影響を受けやすいので(笑)。もしかすると、いつか人生を振り返ったときに「きっかけは、JINS PARKで編集長をさせてもらったことですね」と語るような、大きな出会いが待っているかもしれません。4ヶ月間、みなさんと一緒に楽しみながら学びたいと考えています。

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きらきらとした笑顔でどの質問にもじっくり丁寧に回答してくださる峯岸さん。「このお仕事が決まってから、どこにいてもJINSのロゴが目に飛び込んでくるんです。こんなに身近な存在だったんだな、と改めて思いました!」と話し、取材チーム一同も笑顔にしてくれました。
取材の最後、「編集長」を務めるにあたってこんなふうに語ってくれました。
「“編集長”というのは、話題性や知名度だけではなく、これまでやってきたことや私自身を見て指名いただいたことだと思うので、本当に光栄で、すごくうれしかったんですよ。見てくださっている方がいるんだ! と、また実感できるできごとが増えて幸せです。これも自己ベストの更新。いい特集をお届けしたいですね」
峯岸編集長の任期は10月からの4ヶ月間。これからお届けする記事を楽しみにお待ちください!