しんのすけ どうもこんにちは! ふだんはTikTokで映画の紹介をしてます。しんのすけです。予備知識がなくても思い切り楽しめる、それでいてあなたの常識をゆさぶる。そんな作品をガイドしていきますので、よろしくお願いします!

1本目:ジョジョ・ラビット

 

まずは1本目! 『ジョジョ・ラビット』です。「あたりまえって、ほんとかな?」と聞いて、最初に思いついた作品でした。ひとことで言えば、教育の恐ろしさを描いた映画。
 
主人公ジョジョ・ラビットくんは、ヒトラーユーゲント(ナチスによる青少年教化組織)の教育を受けており、それゆえヒトラーに強く憧れ、ユダヤ人はエイリアンであると信じ込む10歳の少年。しかし、そんな彼がユダヤ人の少女と出会い、自分の固定観念を疑い始め——誰もが、自分の価値観や当たり前を捉え直さざるを得ない映画だと思います。

 

2本目:トゥモロー・ワールド

 

続いては『トゥモロー・ワールド』。2027年、全人類の女性が原因不明のまま妊娠できなくなり18年が経過した……というところからこの作品ははじまります。この世界では「数十年後に人類が滅亡すること」こそが“あたりまえ”。蔓延する絶望感から、あやしい宗教が勃興し、各地で内戦が起こるような状況に陥っています。
 
そんな世界で、実に18年ぶりに、とある女性が妊娠をするんですね。喜ぶべきことのはずなんですが、物語は、そうもいかない方向へと展開していきます。その子を利用しようとする人が出てきたり、あるいは存在自体を抹消しようとする組織が出てきたり……。
 
「極端な例」を用いた思考実験は常識を疑うときの常套手段ですが、この映画を見ると少子高齢化の果てにある絶望について、そして子どもが生まれることそれ自体が希望であることについて考えさせられます。

 

3本目:Our Friend/アワー・フレンド

 

末期ガンを宣告され闘病生活を送る女優のニコルと、夫でジャーナリストのマット、ふたりの親友デイン。『Our Friend/アワー・フレンド』はこの3人にまつわる実話を基にした作品です。デインは、幼い娘を持ちながら病気と戦うニコルとマットのために住み込みで手伝いをしはじめるんですね。
 
映画として見ている分には良い話だし、実際に夫婦も助かっている様子なんですけど、周囲の人からすると違和感が拭えない。劇中、デインの彼女は「なぜ仕事や恋愛を犠牲にしてまで友達のために働くんだ」とつっかかったりもします。大事なものって、人によって違う。こんな「友情」の描き方は初めて見ました。

 

4本目:星の子

 

『星の子』は、芦田愛菜さん演じる主人公ちひろが、自分の”あたりまえ”を疑う話です。ちひろの家族は新興宗教を信仰しており、お布施や道具の購入にたくさんのお金を使うのでとても貧乏。でも、その宗教の教えによってちひろの病気が治っていたり、信者同士の密接な人間関係もあって、幸せに暮らしています。
 
そんなちひろが中学校に進み、徐々に世の中の当たり前と自分が教えられてきたものとの違いについて意識をし始めます。あるとき、初恋の人に両親の「儀式」を見られてしまい——前にこの映画をTikTokで紹介したときは、実際にとある宗教の家で育ったという少女から「自分の“あたりまえ”に疑問を持つことができました」とDMが来たりもしました。ちひろの葛藤、そしてその先にある選択をぜひ見届けてください。

5本目:僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

 

『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』は、櫻坂46の前身、欅坂46の5年間を切り取ったドキュメンタリー映画。膨大な数のインタビューによって構成されているのが特徴です。のちに伝説的センターとなる平手友梨奈の初舞台から覚醒、そして脱退のタイムラインと密着の時期が重なっているにもかかわらず、平手さん本人のインタビューはデビュー時のものだけ。そのあと本人はまったく登場せず、他のメンバーの発言によってのみ、その存在が彫刻されていきます。なかには「圧倒的な天才が1人いるからグループとして成り立っているけど、私たちはバックダンサーでしかないんじゃないか」と語るメンバーもいて、身につまされます。アイドルが大変なのをわかっていても、衝撃を受ける一作です。

 

6本目:アンドリューNDR114

 

『アンドリューNDR114』は、ロボットが主人公のSF映画です。近未来の地球では、家庭用のお手伝いロボットが流行。今で言うおそうじロボットのように、お金に余裕のある家庭であれば一家に一台あっても珍しくない存在です。
 
同型のロボットたちと同じくとある家庭に“納品”されてきた主人公のアンドリューは、ちょっと特殊な、ともすれば不良品のような出来で、本来の機能にはない謎のクリエイティビティを発揮したり、自我があるかのような振る舞いを見せはじめます。そして、購入者である家族と数十年もの長い年月を過ごす中で、「人間は歳をとるから美しいのではないか」、「自分も人間になりたい」と考え始めるに至るんです。
 
購入者家族の数世代にわたる看取りや、同型の女性型ロボットとの出会いをなど、200年の月日がロボットの視点から描かれていきます。人間とロボット、それぞれのないものねだりが交錯する、不思議な映画です。

 

7本目:ミッドナイト・イン・パリ

 

売れっ子脚本家の男性が、ひょんなことから時空を超え、ヘミングウェイやピカソなどの偉人たちと出会う映画です。長く生きた人間はみな「昔は良かった」と言いがちで、主人公もその一人だったんですけど、いざその「昔」に行くと、その時代に生きる人もまた「(もっと)昔は良かった」と言っている。「人はないものに憧れる」という、普遍的な価値観を描いた映画です。芸術界の偉人がたくさん出てくるので、アートの素養がある人は更に楽しめると思います!
 
* * *
 
ぼくからは以上です! 選民思想に新興宗教、ロボットに高齢化社会の行く末などなど、いろんなテーマをエンタメでくるんで、2時間程度で気軽に見せてくれるのが映画のいいところ。
 
今回紹介した7本、どれも心からおすすめできる作品なので、ぜひ配信サービスなどを使って、1本でもいいのでご覧になっていただけると幸いです。映画を観ることで、あなたの“あたりまえ”に変化が生まれたら、すごくうれしく思います。

 

【プロフィール】
しんのすけ
齊藤進之介。1988年、京都府生まれ。映画感想TikTokクリエイター。映像作家、専門学校講師。現在はドラマ・映画の監督業を始め、ジョニー・デップ、トム・ホランドらハリウッド俳優へのインタビューも行う。初の著書となる『シネマ・ライフハック 人生の悩みに50の映画で答えてみた』が2月に発売となったばかり。

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